ベランダは妻の花野 ― 2005/06/08 16:18
原田達夫さんの第一句集『虫合せ』から、きのうご紹介した句のほかに、十 句を選句してみた。 昆虫学を専攻し、農薬会社にお勤めだった原田さんの、 自然観察は鋭い。 「落し文」は、夏の季語。 オトシブミ科の甲虫が栗・ク ヌギ・楢などの葉を巻いて巣を作り、卵を産みつけ、地上に落とす。 物は見 ているが、名前がこんな粋なものだとは、知らなかった。 蠅虎(はえとりぐも)、 あめんばう、かまどうま、金亀子(こがねむし)、蟻地獄、放屁虫、まくなぎ(糠 蚊の柱)なども登場、章の名前が虫の名前になっているのも洒落ている。 山毛 欅(ぶな)。
落し文拾はずに行く切通し
山毛欅若葉縄文人として歩く
ぐぶぐぶぶ春泥を来るフラミンゴ
なかなか色っぽい句もあり、そういう目もお持ちなのを再認識した。 櫨(は ぜ)。
白き手に白き手つづく風の盆
扇風機こめかみ透けるをんなかな
中年のをとことをんな櫨紅葉
と、いっても、よき家庭人、奥様と母上を詠んだ句に、佳作が多い。
もの言はで似たもの夫婦四日かな
菊日和女房とするにらめつこ
ベランダは妻の花野と申すべし
九十の母と手つなぐ濃あぢさゐ
最近のコメント