井上ひさし作『箱根強羅ホテル』2005/06/09 10:27

 7日昼、初台の新国立劇場中劇場で、井上ひさし作、栗山民也演出の『箱根 強羅ホテル』を観てきた。 こまつ座を通してチケットを取ってもらったら「お 代は観てから…」ということだった。 観て、さっそく振り込みに行った、出 来栄えと面白さだった。

 出演は、麻実れい、内野聖陽、段田安則、藤木孝、大鷹明良、酒向芳のほか、 こまつ座の芝居でおなじみの辻萬長、梅沢昌代など。 内野聖陽はNHKテレ ビの『蝉しぐれ』で、後藤田夫人になった人を相手に、清々しい主役を演じて いたが、文学座の所属とは知らなかった。 「まさあき」という名前は、憶え られず、損だ。 藤木孝、あいかわらずやっていたんだ、大昔初期のミュージ カル『マイフェアレディ』に出ていたっけ。 麻実れい、さすが宝塚出身、柄 といい歌といい、この芝居の核になって、大輪の華やかさを見せる。

 戦争末期、箱根強羅ホテルにソ連大使館が疎開していた。 当時、ソ連は、 連合国軍に追いつめられた日本にとって、数少ない中立同盟国だったし、何を 考えているのかわからない仮想敵国でもあった。 ホテルの隣の星製薬社長の 別荘に、元首相で後にA級戦犯として処刑される広田弘毅が滞在し、ソ連大使 のマリクとひそかに接触して、ソ連ルートの和平工作をした事実がある。

 井上芝居では、ソ連大使館が疎開してくることになったその箱根強羅ホテル に、臨時雇いとして集まってきた怪しげな人物たちが動き出す。 麻実れいは、 ソ連大使館でロシアの子供たちに日本語とバレエ、音楽を教えているハーフ。  藤木孝は戦時で閉鎖された図書館の老職員、内野聖陽は南方からマラリアで内 地送還された庭師、ほかの男達が戦争に行っていないのは近眼、片目、寄り目 というふれこみなのだが…。