ゴフスタインの『ピアノ調律師』2005/08/09 08:41

 すえもりブックスの末盛千枝子さんから、ご自身の訳で出版されたばかりのM・B・ ゴフスタイン『ピアノ調律師』をいただいた。 原題は“TWO PIANO TUNERS”、こ のTWOに意味がある。 末盛さんとのそもなれそめ?が、神田でゴフスタインの『画 家』(ジー・シー・プレス)を見つけて、ファン・レターを出したことだったのを思い出 す。(1986.12.「等々力短信」411,412,413号) その後、お会いする機会があって、話を している内に、学生時代に面識はなかったが、同期の卒業だったことがわかったのだっ た。

 『ピアノ調律師』には、カバーの絵を入れても、たった10枚の絵しかない。 それ も線描で、カバーに二色が使われている以外には、色はない。 あと、調律道具を説明 する図が1枚ついている。 72ページの本で、絵やその裏の白紙、題や奥付を除いた 47ページが本文ということになる。 つまり、文章が多い。

 男やもめのルーベン・ワインストックは、二年前に、よその町に住んでいた息子夫婦 が亡くなったので、孫娘のデビー・ワインストックを引き取って、一緒に暮している。  ルーベンはピアノ調律師で、世界的なピアニストのアイザック・リップマンが「世界一」 というほどの腕の持ち主だ。 ルーベンはデビーをピアニストにしたいと思っているが、 デビーは祖父の仕事にあこがれ、調律師になりたくてたまらない。 アイザック・リッ プマンがこの町でコンサートを開くことになり、ルーベンはデビーにその演奏を聴かせ れば、ピアニストになりたくなるのではないか、と考える。 そして、事件が起こる。  あとは、この絵本を読まれてのお楽しみに…。

 私は末盛さんへのお礼のメールで、先日の明治大学での不連続講座「俳句とはなにか」 の中で、井上ひさしさんは、講談社が『蕪村全集』を出し続けていることに関連して、 損を承知で売れない本の出版を続けている出版社がある、それを読者がサポーターとな って支えなけりゃあダメ、「どうぞ本を買ってください」、いい本は日本の厚みに関係す る、と話していたことにふれ、「私は、すえもりブックスのことを思いました」と書いた のだった。