熊野誓紙、八咫烏、三種の神器2005/08/27 11:05

 夢枕獏さんの安倍晴明と「八咫烏」の話で思い出したのだが、大河ドラマの 『義経』に熊野水軍の田辺別当湛増が出てきて、弁慶に説得されて源氏に味方 するという義経宛の書状を弁慶に渡す。 テレビでその書状の裏がチラリと見 えて、カラスがたくさんいる模様があった。 熊野権現の牛王(ごおう)宝印の 誓紙である。 落語で、女郎が馴染み客に出す「起請文(きしょうもん)」に使 われる紙だ。 「わたくしこと、来年三月年期があけ候えば、あなたさまと夫 婦になること実証なり 吉原江戸町二丁目 喜瀬川」などと書く、あれである。

 「八咫烏」から「八咫鏡(やたのかがみ)」も連想する。 『義経』でも、目 下「三種の神器」が問題になっている。 義経は、一の谷でも、屋島でも、こ れを保持する天皇が正統な支配者であるとされる「三種の神器」八咫鏡、草薙 剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を取り戻せなかった。   先走って、壇ノ浦ではどうだったかと、『世界大百科事典』で「壇ノ浦の戦」を 見たら「京・鎌倉が深い関心を寄せた三種の神器のうち、鏡は無事、神璽も海中 より回収されたが、宝剣は二位尼(清盛の妻時子)が抱いて沈んだままになった (杉橋隆夫)」とあった。 元来、鏡は伊勢神宮の、宝剣は熱田神宮のご神体だ から、宮中にあるのはその模造品(レプリカ)だという説もある。 壇ノ浦の後、 伊勢神宮の倉から一本の剣を選んで、三種の神器に加えたという話もある。

 ヤジ馬は、今「三種の神器」はどこにあるのだろうか、などと余計なことを 考えてしまう。 宮中の賢所は三種の神器の一つである神鏡を奉安する所とさ れる。 天皇家当主である天皇も実際に神器を見ることは許されておらず、即 位の礼でも、儀礼的に箱のまま袋のまま継承式を行っているだけらしい。