リンボウ先生の「書き方教室」2006/03/11 07:07

 「当り前のことを、当り前にやる」「当り前が、一番むずかしい」と、似たよ うな話を聞いたな、と思う。 一つは、1日に書いた白洲正子さんの能の舞の 話。 六百年かかって作り上げてきた、削ぎ落としてきた、“型” (かた)を徹 底的に学ぶことによって、中身が充実してくるというもの。 もう一つは、作 家・林望さんの「リンボウ先生の手取り足取り書き方教室」の文章の品格に関 する一節、「自分の心に正直に、等身大の言葉で書くことが大切。 背伸びした り、知ったかぶりをしたり、嘘をついたり、ひねったりしない」というもの。

 この「書き方教室」は、『知るを楽しむ』木曜“日本語なるほど塾。”2月分 4回のシリーズだった。 毎日<小人閑居日記>を書いているから、文章につ いては関心があるし、知らず識らず、おおざっぱなノウハウも身につけている のだろう。 あらためて「書き方教室」に入門してみると、うなずくこともあ り、教えられることもある。

 リンボウ先生は、うまい文章は、他人(ひと)が先をどんどん読みたくなるよ うな文章だという。 そして、うまい文章を書くキーワードをあげる。  (1)話し言葉。 心の中で話しながら書いていく。 (2) (上に書いた)品格。  (3)離見の見。 また世阿弥が出て来た。 「見所(けんしょ、観客席)より見る 所の風姿(自分の姿)は、我が離見(向うから見る見方)なり。 然れば、我が眼の 見る所は、我見(こっちから見る見方)なり、離見の見にはあらず。 離見の見 にて見る所は、即、見所同心(見物人がどう見るか)の見なり。」 離見=客観的 な描写。 客観的であるかどうかが、よい文章の分水嶺。 (4)敬語。 日本語 には二人称がないが、敬語をつかうことで、二人称を表現できる。 例「召し 上がりますか」。

 リンボウ先生、推奨の文章は、自分を客観的に観察して(冷静で、おだやかな)、 戯画化するような文章。 等身大の、飾らない言葉に、品格がある、という。