志ん輔の「お若伊之助」2006/05/02 07:43

 ざっと思い出すと、「お若伊之助」を落語研究会でやったのは、円生と志ん朝 だから、古今亭志ん輔にとっては大変な大ネタだったのだろう。 帰りがけに 友人が、「ねずみ」といい、最近人情噺が多いようだという。 やり手に、大ネ タをやったという達成感があるのだろう、聴く方は、滑稽噺のほうがいいのに、 と答えた。

 志ん輔は、「超常現象」などという難しい言葉を使って、狐や狸のせいにした のは、みんなが落ち着く、安心するところがあったからだろう、とマクラを振 る。 石町(こくちょう)二丁目の生薬屋佐賀屋の娘、お若(18)は今小町といわ れる美人、一中節が習いたいというので、に組の頭、初五郎に頼むと、元は武 士の伊之助(24)を世話して来る。 母親が男の師匠に反対なのを、初五郎が伊 之助の人柄に太鼓判を押して、教えに来ることになる。 伊之助は色白、立ち 姿が良くて色気がある、声も芸もいいから、たまらない。 猫にかつぶし、噺 家に紙入れ、たちまち二人は恋仲になる。 女親は鋭い、初五郎に話をして、 伊之助には二十五両の手切れ金で二度と会わない約束をさせ、お若は根岸の里 は御行の松、剣術指南のおじさんの道場の寂しい離れに預ける。 昼はヤット ウの稽古で騒がしいのだが、終ると実に静かで、寂しくて退屈だ。 お若の恋 煩いは、粥でも、薬でも、治らない。 一年経った弥生の半ば、道場主はお若 の部屋に二人の影を見つけ、始めに伊之助の世話をした初五郎を呼びつける。  双方の主張と話のなりゆきで、初五郎が、根岸と伊之助の家のある浅草橋の間 を行ったり来たりする、そのおかしさがこの噺の聴かせ所だ。 そして種子島 の火縄銃と、大ダヌキが登場する。

 まだ、志ん輔を、円生、志ん朝とくらべるのは、気の毒かもしれない。