前田祐吉監督の慶應野球2006/05/24 07:47

 「小泉信三君 没後40年」特集の『三田評論』5月号に「日本野球よ、永遠 に」という三人閑談が載っている。 前田祐吉慶應野球部元監督、ノンフィク ション作家の佐山和夫さん、上田誠慶應高校監督。 スポーツ(語源はdisport =気を晴らす、だそうだ)である「エンジョイ・ベースボール」の慶應野球を、 必勝精神主義の野球道と対比して語っていて、面白い。 球場でのマナーが紳 士的だったのが印象的な前田さんの発言が特にいい。

 「僕は前後十八年監督をやらせてもらって、唯一自慢できるのは全員が卒業 したことです。当たり前のことだけど、監督が学生が勉強するのを妨げてはな らない。学生にとって、授業に出て勉強するのは重要な権利ですから。」「僕が 慶應の監督であったことで幸せだったのは、負けたら、ああみんな勉強してい るんだからいいやと言い、優勝でもすれば新聞買いまくってニヤニヤしてれば よかったこと(笑)。」

 「僕の監督時代、何も新基軸はなかったですが、一つだけ、「声を出すな」と いうのがありました(笑)。なぜか「声を出す」というのが日本の球界の鉄則な のですが、100人も一緒に練習していると、余計な声で騒がしくて、肝心の打 球の音が聞こえなかったりする。だから「黙れ」と。」 「それに類したことで「ベンチを見るな」も僕の口癖でした。一球ごとにベ ンチを見ると自分で考えなくなる。自分で考えればそこで何をすべきかわかる わけです。ここでどうするべきか二つに一つというときだけベンチを見ればい いんです。」