リンゴにまつわる思い出など2007/10/14 07:51

 渋谷夏潮会「林檎」「肌寒」の句会で、私が選句したのは次の七句だった。

  つぎつぎと林檎掘り出し林檎箱      英

  日の光もろとも捥いで林檎かな      秋

  慰めは言はずくるくる林檎剥く      和子

  母の手や病めば林檎を摺りくれし     秋

  腕まくりしてもみがらに林檎一ツ     早苗

  肌寒やひとすじ過(よ)ぎる煙草の香   なな

  肌寒や「易」に預けしたなごころ     房夫

 やはり出句は圧倒的に「林檎」のほうが多かった。 私が選んだ句にもある が、リンゴにまつわるいろいろな思い出が詠まれていて、そうだ、そんなこと もあったと思う。 戦後大流行した「りんごの唄」、林檎箱をかきまわすとまだ あったリンゴ、ちくちくする籾殻、くるくる、そして長く長く剥き、病気にな って摺ってもらったリンゴ…。

 「肌寒」で、主宰選に入った句には、つぎのような句があった。 私も選句 した「易」の句は、「肌寒や「易」に預くるたなごころ」としたほうがよい、そ の時の手の裾の肌寒や、易者の手のぬくもりが出る、そして、おそらくよい「易」 ではないだろうとの読みだった。

肌寒や渋谷流るる川痩せて         和子

更けてよりつのる雨音肌寒し        松子

脱いでまたはおる上着や肌寒し       早苗

肌寒や夜行列車の窓に顔          美保

豆腐屋の喇叭遠くに肌寒し         和子

吾が影を踏みゆく廊下肌寒き        房夫