現代アートと企業の支援2008/03/19 08:05

 評判の高い吉田修一さんの『悪人』も、朝日新聞夕刊の連載中に読んでいた のだが、きょうは小説の話でない。 『悪人』の挿絵は、束芋(たばいも)さ んという人が描いていた。 一見して、忘れられなくなるような、気味の悪い 絵である。 あれを家の中に飾っておく気にはならないが…。

 3月9日の「新日曜美術館」は「KPO閉館 現代アート発信の20年」だった。  KPOはキリン・プラザ・大阪、キリンビールがメセナの一つとして大阪のど真 ん中・戎橋際でやっていた。 1990年からビデオによる応募を受けて、現代ア ートの新人を発掘してきた。 束芋さんも、1999年「にっぽんの台所」という 作品で、ここの賞を受け、デビューした。 浮世絵の色をパソコンの絵に取り 込んで、現代日本を、パパがリストラされた家の台所から、ユーモラスな、不 条理劇に描き出して、見る者を不安にしたという。 番組当日のゲストだった ヤノベケンジさんも、彫刻科の大学院生だった時に、近未来の廃墟を思わせる ロボットのような人形作品をつくって、KPOの第一回アワードを受け、発掘さ れた美術家だそうだ。 翌年アトムスーツ・プロジェクトという大展覧会を KPOで開いてもらい、地位を確立したという。 私は知らなかったが、今や、 世界的に活躍しているそうだ。 石橋義正(映像作家)、高橋匡太(光のインス タレーション)なども、ここから出た。

 たくさんの新人を発掘し、通りすがりの人々が、現代アートとは何かを見る 機会をつくってきた、そのKPOだが、時代とともに次第に、法令順守の企業 と、先鋭的なアートとが、ぶつかるようなことが増えてきた。 1996年のグラ ンプリ、芳賀大暉「融解座敷」は、沢山のパチンコ玉を閉じ込めた氷の塊が、 美しい赤色を溶け出し、崩壊していく過程を描いた作品だったが、食品会社と しては問題があって、かなりもめたらしい。 氷の塊が、豚の血で出来ていた から…。