強き者よ、汝の名は女なり ― 2008/03/26 06:31
諸田玲子さんの『希以子』に登場する男たちは、ことごとくダメ男である。 希以子自身が述懐しているように、なんと男運の悪いことか、いや、希以子自 身が男をダメにしているのかもしれない。 それほどに希以子は強い。 これ でもか、これでもかと、災難や不幸が降りかかってくるのだが、そのたびに体 に力が湧いてくる。 まるで災難や不幸を糧にして、生きていくようだ。 ど んどん強くなっていくようにさえ見えてくる。
幼子を背中にくくりつけ、囚われの身となった市太郎を探して、満州の街を さまよった。 高給に誘われ承徳から移った北京では、女郎屋から命懸けで逃 げ出し、働きづめに働いてバーを経営し、ぐうたらな亭主に手こずったあげく、 賊に斬られて重傷を負った。 戦争が終わって、その亭主の故郷久留米に帰国、 闇商売でがむしゃらに働きながら、五回も妊娠と中絶をくりかえし、40歳で 31歳の亭主の子を産む。 乳飲み子をおぶって市場に出ているうちに、亭主は 素封家の後家と懇ろになっていた。 希以子は、ついに、ひとりで生きていく 決意をして、2歳の娘をおぶい、久留米をあとにする。 母は強し、女は強し。
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