谷村志穂さんの『黒髪』 ― 2008/03/27 07:54
2月17日のBS2「週刊ブックレビュー」の特集「愛は国境を越えた」に作家 谷村志穂さんが登場し、渾身の長編ラブロマンスという『黒髪』(講談社)につ いて語っていた。 太平洋戦争下の函館で、ロシア人男性との禁断の愛に生き た女性を描いたという。 ちょっと読んでみたくなって、図書館に頼んでおい たら、3月21日に順番が回ってきた。 23日の日曜日、朝の散歩のあとで、 腰痛が始まる感じになった。 これはちょうどよいとばかり、安静と早寝をき めこみ、二日ばかりで520ページの長編を読みきった。 生みの母を捜し求め ていく、物語の展開にずんずん引きずり込まれたせいもある。
自分の出生の秘密を探っていく小杉りえは2005年に61歳というから、1944 (昭和19)年生れ、ほぼ同年代ということになる。 番組で谷村志穂さんは「60 歳を過ぎた女性、人生の坂でいうと、確実に下り坂の…。その女性が、もう一 つ知りたい、もう一つ何か出来やしないか、と思う。 その情熱を書けるなら、 書いてみたいと思った」と、話した。 小説では、こうなる。 「子育ても終 え、夫は定年後、第二の仕事につき、ここからは余生という弛んだ時間を生き ていいはずなのに、りえにはまだやり残したことがあるような気がして仕方が ない」 高校の生物学の教諭だった夫に、それを言うと、趣味と言えば今も植 物採集くらいの生真面目な彼は「俺は、もう十分だよ。いつぽっくり死んでも 本望だ」 りえは、そんな夫につまらなさを覚える。 「つまらないというよ りは、心を尽くして生きるということに不誠実な気がしてくるのである」
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