木版画の制作工程 ― 2008/04/12 07:08
今回の川瀬巴水展では、二つの方法で、版画制作の過程を紹介していた。 一つは、巴水の描いた水彩の原画と、試摺、完成作品を並べての展示である。 完成作品は、原画とは、色の感じや景色が微妙に異なっているものがある。 た とえば、明るいものが夜景になったり、雨の線が加えられたり、原画では描か れていた人物が消えたりしている。 彫師や摺師との協同作業といっても、そ こには絵師・川瀬巴水の考えが色濃く反映されているのだろう。 あるいは版 元の意向のようなものも入ったのかもしれない。
もう一つは、巴水晩年に撮影された『版画に生きる』という映画のビデオが 公開されていた。 1956(昭和31)年の「法隆寺西里」の制作過程を、斑鳩 の里でのスケッチから、版下制作、彫師の版木彫刻、摺師による完成までを、 渡邊木版美術画舗の二代目店主渡邊規氏が撮影、42分の作品にまとめたものだ。 巴水の描いた原画の線を、彫師(前田)が板を動かさず、右手の小刀の切り回 しだけで彫っていく。 丸鑿(のみ)、角鑿と進み、10~14日で凸版の墨板が 完成する。 墨摺で校合摺(きょうごうずり)を10数枚摺り、色板をつくる ために巴水が朱で色出し(色別の個所指定)をする。 10枚ほどの色板の完成 に、また10~14日かかる。 そして摺師の作業となる。 馬連の手づくりか ら紹介していたが、その随所に力のいる、しかも微妙な熟練の技が必要なこと がわかった。
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