「コレミツ」について2008/04/30 07:08

 島田雅彦さんの『徒然王子』(1月20日から朝日新聞朝刊に連載中)、悩みの 多い王子テツヒトがトウキョウの真ん中にある宮廷から、夜逃げをする。 王 子がジョギング中に、鬱で死のうとしていたのを拾って従者にした、元お笑い 芸人のコレミツただ一人を供にして…。 王子は人として生まれながら、誰も が持っている、住みたいところに住む自由、愛する女性と暮らす自由を持って いない。 それを戦って勝ち取るしかないと、現実世界に飛び出したのだ。(3 月21日・第61回) 小説であることは承知しながらも、新聞連載にこんなこ とを書いて大丈夫なのか、と、読みながらハラハラすることがある。

 従者のコレミツという名だが、恥かしながら、その由来を知らなかった。 た またまNHKの「知るを楽しむ」で瀬戸内寂聴さんの「源氏物語の男君たち」 の三回目を見た。 つまり一回目も二回目も見なかった。 その三回目が「無 二の従者・惟光(これみつ)」だったのだ。 惟光は、身分が高くて自分では動 き回れない光源氏のために、いろいろと情報収集をし、手紙を届けたりして、 その情事の段取りをつけるのだ。 そして、自分もちょっと得をしたりする。

 『徒然王子』の従者コレミツは、今年千年紀という『源氏物語』から来てい た。 『広辞苑』の「これみつ」【惟光】には、「幇間(たいこもち)の異称」 「源氏物語の主人公光源氏の侍臣。主人の言い付けをよくきいて機嫌をとった ことから」とあった。 源氏名を持つ人々のいる遊里のほうが、平成の閑人な どより、はるかに教養が深いのであった。

小人閑居日記 2008年4月 INDEX2008/04/30 11:35

3825 柳家ほたるの「転失気」<小人閑居日記 2008. 4.1.>

3826 左龍の「粗忽長屋」<小人閑居日記 2008. 4.2.>

3827 扇橋の「彌次郎」<小人閑居日記 2008. 4.3.>

3828 マクラ・志ん輔が茶会に出た<小人閑居日記 2008. 4.4.>

3829 志ん輔の「豊竹屋」<小人閑居日記 2008. 4.5.>

3830 小三治のマクラ・広州俳句会<小人閑居日記 2008. 4.6.>

3831 小三治の「うどんや」<小人閑居日記 2008. 4.7.>

3832 松岡正剛さんの「編集」<小人閑居日記 2008. 4.8.>

3833 相反したものを受け容れる日本<小人閑居日記 2008. 4.9.>

3834 川瀬巴水の木版画<小人閑居日記 2008. 4.10.>

3835 巴水の東京、その震災前後<小人閑居日記 2008. 4.11.>

3836 木版画の制作工程<小人閑居日記 2008. 4.12.>

3837 「囀」と「朝寝」の句会<小人閑居日記 2008. 4.13.>

3838 「囀」と「朝寝」の選句<小人閑居日記 2008. 4.14.>

3839 季題研究、「囀」と「朝寝」<小人閑居日記 2008. 4.15.>

3840 薩摩藩「江戸屋敷」考<小人閑居日記 2008. 4.16.>

3841 薩摩藩邸焼討事件と西郷・勝の談判<小人閑居日記 2008. 4.17.>

3842 天璋院・篤姫という女性像<小人閑居日記 2008. 4.18.>

3843 将軍家と島津家と近衛家<小人閑居日記 2008. 4.19.>

3844 13代将軍家定はバカ殿か?<小人閑居日記 2008. 4.20.>

3845 春キャベツの煮びたし<小人閑居日記 2008. 4.21.>

3846 「テケツ」と赤坂サカス<小人閑居日記 2008. 4.22.>

3847 明治の「年賀欠礼」新聞広告<小人閑居日記 2008. 4.23.>

3848 社員数・編集局員数と「福沢の時事新報」<小人閑居日記 2008. 4.24.>

短信 3849 安政5年・1858年<等々力短信 第986号 2008.4.25.>

3850 昭和29(1954)年の寄席の写真<小人閑居日記 2008. 4.25.>

3851 談志の書いた小さん・文楽<小人閑居日記 2008. 4.26.>

3852 立川談志の「落語家」論<小人閑居日記 2008. 4.27.>

3853 八代目三笑亭可楽と「本格」<小人閑居日記 2008. 4.28.>

3855 「乗り物のトイレ、その先どこへ」<小人閑居日記 2008. 4.29.>

3856 「コレミツ」について<小人閑居日記 2008. 4.30.>