「落合や」「八回退部」自由人2008/05/09 07:06

 『落合博満 変人の研究』冒頭の「落合伝説」に、生来、封建的な体育会系の 上下関係になじめず、秋田工業野球部を「八回入部八回退部」、退部届を書かず に休部状態で、好きな映画を見ていて、試合が近づくと呼び戻され、たった一 週間の練習で、四番を打ち、本塁打を量産した。 暴力が好きではない。 野 球部セレクションに合格して入った東洋大学も三か月で合宿所を飛び出して退 学。 高校・大学においては、本格的な野球を経験していないに等しい、とあ る。

 ねじめ正一さんが、落合についての対談相手の一人に選んだ赤瀬川原平さん は「自由生活者」と落合のイメージがぴったり重なってくる、という。 共同 体を出て、味方なしに生きていくことを選択している。 野球はアメリカの発 明なのに、相撲と共通することが実に多い。 なによりバッターとピッチャー の一対一の関係が基本である(同じ話が2月にこの日記に書いたアンドリュ ー・ゴードン『日本人が知らない松坂メジャー革命』にあった)。 アメリカ生 れのスポーツだから民主主義で、すべての選手に打順が平等にめぐってきて、 守備と攻撃の機会も平等に入れ替る。 パスをする、パスをしがちな(日本代 表の)サッカーなどと違って、野球の場合はみんな一人、打席に入った時の孤 独、落合が子供のときから野球が好きで、野球だけをコアにしてゆくのには、 それがあったのではないか、と。

 冨士眞奈美さんも、信子夫人が、夫婦お互い、ちゃんと独立した個だと考え ている、俳句の切れ字じゃないけどと、主語として独立させている、「落合や」 と切れ字になっている、と話している。