文明の源泉をロンドンで見る2008/05/29 06:37

 山内慶太さんの「福澤先生の英国体験」に戻る。 山内さんは、福沢がロン ドンの当時の先端の病院や福祉施設を見学して、その表面だけでなく、社会の 側面、底面を見ていることに注目する。 キングス・コルレージ(キングス・ カレッジ)病院では、「会社を結びて建る」と、どういう形で病院が運営されて いるか、その方法や財源に関心を示している。 福沢は27日の日記に引いた 「ドクトルジョンソン」と、彼を紹介してくれた「ドクトルチャンブルス(チ ェンバーズ)」という二人のセント・ジョージズ病院の医学校同期生の案内に恵 まれて、ショーロジ(セント・ジョージズ)病院、セント・メアリーズ病院な ども見学している。

 福沢たちはチェンバーズ博士に伴われて、キングス・カレッジ・スクールと いう初等中等教育の学校も見学した。 英国国教会系の一貫教育の学校だ。 山 内さんが発掘した当時の新聞記事によると、一行は見学の記念に半日の休暇を 生徒たちに与えるように校長に頼み、校長がそれを許可したので、生徒たちは 歓声を上げたという。 一行には、そういう余裕、遊び心があり、それは福沢 がパリで写した頬杖をついているくつろいだ格好の写真にも出ている と、山内さんはいう。

 福沢は文久2(1862)年4月11日付のロンドンから中津藩の用人・島津祐 太郎宛の手紙に「当今の急務は富国強兵に御座候、富国強兵の本は人物を養育 すること専務に存じ候」と書いている。 帰国後、福沢塾の拡充、翌年には塾 舎を移転、そして慶應義塾の独立、旺盛な執筆活動へと進んでいくことになる。  1か月半のロンドン滞在で見たものがいかに大きかったか、山内さんは最後に 『世界国尽』のヨーロッパの項を引いた。 「富国強兵天下一」「文明開化の中 心と、名のみにあらず其実は、人の教の行届き、徳誼を修め知を開き、文学技 芸美を尽し、都鄙(みやこいなか)の差別なく、諸方に建(たつ)る学問所、 幾千万の数知らず。彼(か)の産業(すぎわい)の安くして、彼の商売の繁昌 し、兵備整ひ武器足りて、世界に誇る泰平の、その源を尋るに、本(もと)を 務る学問の、枝に咲きたる花ならん。花見て花を羨むな、本なき枝に花はなし。 一身(ひとり)の学に急ぐこそ、進歩(あゆみ)はかどる紆路(まわりみち)、 共に辿りて西洋の、道に栄(さかゆ)る花をみん」

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