10分で読める『源氏物語』2008/08/17 08:15

 『源氏物語』は、読んだことがない。 おばさまたちがカルセン(カルチャ ー・センターをこう呼ぶというのを、北村太郎を描いた『荒地の恋』で知った) で読むものだと思って、敬していた。 『藝術新潮』2月号が「天皇になれな かった皇子のものがたり」という『源氏物語』特集で、その中に「10分で読め る『源氏物語』」というのがあった(9月に同じ題の〈とんぼの本〉になるらし い)。 「10分で読める」とは、ありがたい。

 第1部(第1帖「桐壺」~33「藤裏葉」)、第2部(34「若菜 上」~41「幻」)、 第3部(42「匂宮」~54「夢浮橋」)の三つに分け、その梗概も次のようにな る。 第1部「天皇になれなかった皇子・光源氏は、さまざまな女性遍歴とバ ッシングを経て、ついに上皇に准じる位まで上りつめる。」 第2部「我が世の 春を迎えた光源氏だったが、妻・女三の宮が不義の子を産むわ、最愛の紫の上 は死ぬわで、ついに出家を決める。」 第3部「光源氏はいつの間にか死んで いる。3帖のインターバルを経て、物語は「宇治十帖」へ。ポスト光源氏の薫 と匂宮、そして宇治の女たちがおりなすフィナーレ。」

 それぞれの帖も、第26帖「常夏」は「内大臣は、光源氏が頭を下げれば娘 と夕霧の仲を認めようと思うが、光源氏は非友好的。玉鬘の素性を知らぬまま 娘を探す内大臣、名乗りでた近江の君はヤンキーだった」、第34帖「若菜 上」 では「出家を決めた朱雀院は愛娘・女三の宮を光源氏に嫁がせようとし、光源 氏は彼女が藤壺の姪ゆえに承諾。紫の上、そりゃないわと思う」、といった調子 だ。

 それぞれの部に、男女関係、婚姻関係、思いかなわず、実の親子でない、な どを表示した登場人物の相関図もついている。 なかなか複雑なので、看板ど おり「10分で読める」とは行かなかったが、初心者の『源氏物語』入門、全体 の把握には、役に立つ。