得意の絶頂に迫る影 ― 2008/08/20 07:25
瀬戸内寂聴さんの解説に沿って、もう少し『源氏物語』を続けよう。 権大 納言となった光源氏は、さらなる昇進を期する。 少年である冷泉帝のところ に、最初に入内したのは親友の頭(とうの)中将(権中納言)の娘、弘徽殿女 御(こきでんのにょうご)で、ふたりは年も近く仲睦まじかった。 頭中将は、 源氏が須磨にいる時、右大臣家の婿でありながら、男の友情で訪ねてくれたの に、源氏は帝より九つ上の養女・梅壺(斎宮)女御を入内させ、外戚となって 政治権力を握ろうとする。 第17帖「絵合(えあわせ)」、絵の好きな帝のと ころに、両派は絵を持ち寄って競い合い、光源氏作の須磨絵日記が勝敗を決し、 梅壺女御が中宮(第一の妃)となる。 臣下に降されてから20年、光源氏は 太政大臣となる。
光源氏は実父だと、冷泉帝が知る。 譲位を持ちかけるが源氏は辞退し、帝 は准太上天皇という位を与える。 39歳、天皇より偉いこととなる権力の最高 の位にのぼりつめた。 六条院という広大な屋敷を建設。 春の御殿は正妻紫 の上と自分の住居、夏の御殿は花散里、秋の御殿は梅壺女御(秋好中宮(あき このむちゅうぐう))の里帰り用、冬の御殿は明石の君を住まわせる。
出家を決めた朱雀院は、娘・女三の宮(14)を光源氏に嫁がせようとし、源 氏は彼女の若さへの興味と、藤壺の姪で似ていることから承諾する。 降嫁ゆ え正妻となることで、紫の上は切れて、うつの重い病となる。 六条院で蹴鞠 をしていた若い貴公子・柏木が、風で揺れた御簾の内に、女三の宮を見てしま う。 得意の絶頂にあった光源氏に、暗い影が差してきた。
最近のコメント