衰えていく光源氏を描いた深さ2008/08/21 07:11

 衰えていく光源氏を描いた深さが、『源氏物語』の千年も読み継がれている理 由だと、寂聴さんは言う。 紫の上の看病のため源氏が六条院を離れているう ちに、柏木が忍び入り、身分も命もいらないと思うほど惑乱する。 女三の宮 は柏木の子を身ごもる。 恋文を見つけた源氏は、ただ怒り、プライドを傷つ けられ、コキュにされた屈辱に逆上する。 昔、父は自分と藤壺のことを知っ ていたのではないかと思うが、源氏には父のその大きさはない。 柏木をいじ め、女三の宮にもねちねち言う。 柏木は、罪の意識から重い病となり、恋の ために泡のように死んでいく。 女三の宮は、男の子を産む。 父の朱雀院が 訪ねてきて、女三の宮は出家させてほしいと願う。

 寂聴さんは、これは「因果応報」ではなく、情熱というものは自分の自由に ならないものだ、無我夢中になると道徳その他が消えてしまう、ということだ。  そこに深い人生が味わえる、と言う。 紫式部は430人の登場人物の心理を書 き、運命(情熱)は人力ではどうにもならないということを書いた。  紫の上に先立たれた源氏は、腑抜けのようになり、まもなく世を去る。 「雲 隠」という題名だけで…。