西欧文化の明晰さと日本のあいまいさ2008/08/29 06:42

 多田富雄さんは次の10回目(6月21日)で、「美しい日本 四つの特徴」が、 現代でも、また世界に対して、通用するかを考える。 2千年にわたって培っ た「日本の美」に視点をおけば、激動する世界の定点観測ができるけれど、問 題がないわけではない。 「四つの特徴」には、抜きがたいあいまいさが付き まとっているからだ、と。

「アニミズム」は、いろいろな価値を受け入れるにはいいが、自分の利益や 権利を主張するときは不利益をこうむる。 「象徴力」は、意味論的にあいま いなものだ。 抽象的なことは概念として伝わるので数学や科学では必須であ るが、象徴力では科学にならない。 「あわれさ」もまた個別的の感情であり、 普遍的な言語では語れない。 「匠の技」にいたっては、まったく言い表せな い。

 近代日本は、西欧文化の明晰さと日本のあいまいさとの二重構造の間で戦っ てきた、と多田さんは言う。 政治や外交は、危機に当たって自国の文化に立 ち戻って考え、微調整をすることを忘れなかった。 美しい国、優しい国日本 は、この緊張によって保たれた。 科学技術の世界では、それを生み出した西 欧文化のルールに従わなければならない。 科学者は二重構造に耐えながら研 究し、今では対等に対話できるようになった。 芸術文化の世界でも二重構造 はあったが、現在では自信をもって日本の美を表現し、発言することが出来る。  グローバリゼーションの嵐の中で、その緊張を保つことが創造の基だと信じる と、多田富雄さんは言う。