一琴の「鬼の面」前半2008/10/06 06:36

 「子と孫の間で、一般人の落語を」と出てきた柳家一琴は西郷さん似、小三 治の弟子で先は横目家助平といった、落語研究会ではお馴染である。 珍しい 噺を発掘しているらしく、「鬼の面」も初めて聴いたので、あらすじを一席。

 伊勢屋の奉公人の女の子・おせつ(12)が、前の店に来て、商売物のお面を 一日中見ている。 店の主人が不思議に思って尋ねると、そのお面が母親に似 ているのだという。 お多福の面だった。 毎日来ているなら、買ったらどう だというと、お金がない、給金は国の狭山に送っている、と。 あげよう、と いうことになる。 おせつは自分の部屋で、箱からお面を出しては話しかける ようになった。 夜中に旦那が、おせつの部屋で、おっ母さんに話しかけてい る声を聞く。 翌日、おせつが子守に出た間に、箱の中を見た陽気な旦那は、 いたずら心を起して、お多福の面を、友達にもらった般若(鬼)の面と、入れ 替えて、忙しさにまぎれて、すっかり忘れてしまう。 帰ってきて、箱の中を 見たおせつは、母親の身に何かあったに違いないと、そのまま表へ駆け出す。  所沢近辺まで来た時には、日はとっぷりと暮れていた。 急いでいるのに、お 堂で開帳中の博打の見張りの男に、火を熾すように頼まれる。 煙がもくもく と立ったので、鬼の面をかぶって、フーフー吹いていると、火がポッと点いた。  煙の中から鬼が出た、男はギャーッ、出た! 博打連中も、警察だ、逃げろ、 となる。 「さいころを忘れた、二と六しか出ないやつ」と大騒ぎ。

「おっ母さん、無事か」と、家に駆け込んだおせつの話を聞いた父親は、だ れかのいたずらだろうと、一緒にお店に謝りに行くことにする。 その前に、 おせつはお腹が空いているだろうと、雑炊あるだけ、裏の仁平からもらった牡 丹餅36個、吉平さんの柿69個、こないだ獲ってきたイノシシまるごと、食わ せる。 「おい、オカメ(そういう名だった)、提灯の支度だ」 お店への途中、 お堂の所で、お金がちらかっているのを、手拭にくるんで、警察に届けること にする。(つづく)