花緑の「刀屋」2008/10/08 06:37

 花緑は、落語研究会は緊張する、毎回上がると、いつもの感想を述べて「誰 が研究するのか、噺家か、客か」と、いう。 「孫」の立場からは、(そのプレ ッシャーの)心の訴えを、言いたくなる。 芸は一代限り、世襲は邪道だ。 一 琴さんが、王道なのだ。 見れば、小さんにも似ている。 小さんの小林盛夫 も、家族中に反対されながら、その情熱を抑えきれずに、噺家になった。 小 三治師もそう、教育者の家に育って、「落伍者」となった。 それが、だれにも 反対されず、着物も用意してもらった。 木久蔵さんもそうだろう。 大劇場 の方(歌舞伎の世界)とは、様子が違う。 変な言い方だけれど、祖父に惚れ てる、好きだ。 その芸は、受け継ぎたい。 小さんは、二・二六事件の反乱 軍の中で落語をやっている。 勲章だ。 「小林、皆を笑わせろ」と、上官に 命令されたが、無理な相談だ。 「子ほめ」をやったが、どっちらけ、生涯で 一番受けなかった。

 「刀屋」は、「おせつ徳三郎」の後半だ。 志ん朝が落語研究会で、最後にや った演目だ(2001年4月)。 そのせいか、暗い噺のような記憶があった。 そ れを、花緑は明るい噺にひっくり返した。 刀屋の説得と、評判の悪いサゲを 丸ごと替えたという。 徳三郎と同い年の刀屋のセガレ、やくざで勘当された という人物を登場させたのだ。 「孫」の意地(?)から生まれた、その工夫 は、成功したように思う。