丸山真男著『日本の思想』(岩波新書) ― 2008/11/14 07:11
9月25日の「等々力短信」第991号「慶應義塾150年に思う」に、こんな ことを書いた。 20世紀までに、ほぼ出尽くした知を縦横に組み合わせた時、 新たなアプローチが生まれるはずだという、松岡正剛さんの「編集」や、友人 神出瑞穂君に聞いた諸科学を動員して総合的に対応する、システム化、知の構 造化によって問題解決にあたる「全体システム思考」について言及し、「「未来 への先導」を記念事業のテーマに、創立150年を迎えた慶應義塾は、総合大学 として、各学部の総力を結集し、衆知を集めて、当面する日本の課題について、 具体的な提言をしていったらどうだろうか。 「福沢諭吉の近代化構想」の実 現されていない部分、「独立心」を持った国民が自発的内発的な主権者となる民 主主義、官尊民卑の打破、国民精神の高尚化と民心の安定などを、現代に合わ せて、どう実現させていくのか。 20年後、30年後の「この国のかたち」を、 どんなものにしていくのか、を」と。
それを書きながら思い出したのが、昔読んだ丸山真男さんの『日本の思想』 (岩波新書)にあった「タコツボ」と「ササラ」の話だった。 茶色くなった 『日本の思想』を引っ張り出してみると1961年11月の出版、1963年4月の 第6刷本130円だった。 1963年4月は、私が大学4年生になった時だ。 少 し読むと、日本の近代的組織体のタコツボ化のところに「綜合大学」が出てき た。 そこでは綜合的な教養が与えられるわけでもなければ、各学部の共同研 究が常時組織されているわけでもない、ただ一つの経営体として、大学行政面 で組織化されているというだけだ、とあった。
そんなことがあって、対話セッションのテキストに、何かないかと訊かれた 時、私はこの丸山真男『日本の思想』を提案したのだった。
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