丸山真男の評価、討論・対話の習慣2008/11/16 06:43

 さて、いよいよ丸山真男『日本の思想』を使った対話セッションである。 対 象にしたテキストは、124頁から138頁の11行目まで、小見出しでいうと「人 間はイメージを頼りにして物事を判断する」「イメージが作り出す新しい現実」 「新しい形の自己疎外」「ササラ型とタコツボ型」「近代日本の学問の受け入れ かた」「共通の基盤がない論争」「近代的組織体のタコツボ化」のところだ。 興 味のある方は、ぜひ再読、ご一読を。

 私が福沢研究の立場から接してきた丸山真男さんは、慶應の外にありながら、 深い福沢の研究によって、福沢を日本近代を代表とする思想家として評価した 人という印象だった。 しかし、今回のセッションでは、毀誉褒貶のかまびす しい人で、強い否定的な意見を持つ人、はっきり言えば嫌いな人の多いことが 判明した。 テキストの範囲でも、問題は指摘するけれど、どう解決するのか を示していない、という意見があった。 宮内環准教授によれば、小尾先生も、 『文明論之概略』を自分で読む前には、『「文明論之概略」を読む』は読むな、 とおっしゃっていた、ということだった。

 ほんの30分ほどの対話セッションであったが、期せずして福沢のいわゆる 「多事争論」の態を成したのは、今後のゼミOB会の一つの参考にはなったか と思う。 “悲劇”(?)と書き始めたが、この歳になって改めて口下手を反省 したり、いろいろと身に沁みて勉強になった。 日本でスピーチを演説と訳し て創始した福沢は、同時に三田演説会にディベートも導入しようとした。 そ れがなぜか演説だけになっていってしまった。 民主主義の基本である、討論、 対話の習慣は、いまだにわれわれの身には付いていないのである。