「社会進化論」の「左旋回」「右旋回」2008/12/12 06:57

 マルクスも「社会進化論」に、ある意味で影響を受けている。 よりよい社 会をつくるために、どうしたらよいか。 「社会進化論」は、左翼思想の正当 化にも使われたが、右翼の思想家も取り入れて、優勝劣敗、弱肉強食の、帝国 主義は当然であるという議論になった。 両義性がある。 松浦寿輝さんは、 それを「社会進化論」の「左旋回」「右旋回」という。

 「右旋回」の一人に、東大初代総長の加藤弘之がいる。 明治7年頃は天賦 人権・自由平等を広めるのに大きな役割を果したが、8年後の明治15年『人権 新説』で国家主義的立場から弱肉強食を主張、天賦人権は妄説と転向した。 一 種のリアリズムに移行したわけで、その鍵が「社会進化論」だった。 日本も 食われる立場から、食う立場へと、明治国家の大義、富国強兵に根拠を与え、 後の帝国主義的な海外進出に理論的背景を与えた。 いわば「曲学阿世」。 福 沢の懐の深さとは、だいぶ違う、と。

 徳富蘇峰も、人権論者、平等主義から、弱肉強食を多用するように転向した 一人。 明治27年の『大日本膨張論』では国権論者に変貌、生産力の競争、 武備主義から生産主義の社会、つまりは富国強兵の内の「富国」を主張した。  「左旋回」「右旋回」の中間。 しかし日露戦争をきっかけに、露骨な帝国主義 の論客となった。(つづく)