院長八十歳を機に、閉院 ― 2009/02/04 07:15
荏原中延の酒井歯科医院の酒井呈先生から「歯科医院閉院のお知らせ」とい うお葉書をいただいた。 「当院は昭和四年当地で開院以来八十年を迎え、二 代に亘りご支援ご厚情を戴きましたが、院長八十歳を機に、平成二十一年三月 三十一日を以って閉院することと致しました。」 歯科は終業するけれど、今後 は息子さんのクリニックを拡充して、さらなる地域医療の充実を目指すという。 お見事、ご立派、というほかない。
父が死んで中延との縁がなくなってから、ご近所の歯医者さんに診てもらっ ているが、酒井歯科医院は子供の頃からの罹り付けだった。 20年ほど前の昭 和63(1988)年7月、酒井呈先生に舌ガンの原因になる危険なものだという 「転移歯」を抜いてもらった時、つぎのようなことを「等々力短信」に書いて いた。
大先生の時代には、モーターの回転を、まだ「まだらの紐」が伝えていた。 父に連れられて、大先生のハゼ釣りのお供をしたことがあった。 釣針を呑み 込んだハゼの口に、道具を差し込んで処理するのが、お得意だった。 大先生 は俳句もよくし、その句集に〈手をはたく鯊のぬくさや冬に入る〉〈覗き込む人 の顔みるはぜ上目〉〈あくまでも鯊強情に口あかず〉などの佳句がある。 ハゼ にも「あーん」と、言われたのだったろうか。
大先生は、息子である今の院長先生のお名前を「呈(すすむ)」と命名された。 「口の王」である。 名前通りの名人になられたから、こちらが観念するまで だけが問題で、例の椅子に横になりさえすれば、最新最高の技術で治療して下 さる。 その安心感と信頼感は、この町に根を下ろし、親子二代にわたって、 地域の人々の歯の健康を守ってこられた実績がもたらしたものだ。
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