「とらや」の赤飯2009/02/08 06:35

 『暮しの手帖』38号に「おいしい赤飯」という特集記事がある。 和菓子の 老舗「とらや」の赤飯と、家庭でそれに近い赤飯を作る方法の紹介である。  「とらや」の赤飯の美味しさは知っていた。 近年では、友達の病院の開院祝 いにいただいて、大喜びをした。

 『暮しの手帖』の記事によれば、「とらや」の赤飯の第一の特徴は、色の濃い こと。 羊羹を始めとする沢山の和菓子の餡を大量に作っているので、それに ともなって出来る小豆の煮汁はたいへんな量になる。 それを煮つめて、色づ けするから、濃くなるのだ。  「とらや」の赤飯の記録の一番古いものは慶安4(1651)年、桂離宮の話で 出て来た後水尾院の御所に、その子、後光明天皇が行幸した際に納入したもの だそうだ。 室町時代京都創業の「とらや」は、切腹を連想する「腹割れ」が しにくいというので武家社会の江戸で好まれたささげ(大角豆)ではなく、小 豆を使う。 小豆は蒸すと煮崩れしやすいが、色が濃くつき、煮汁の渋によっ て味に深みが出る。 さらに「とらや」では、赤飯をしっかりとした食感に仕 上げるため、特別に加圧した蒸気を使うのだそうだ。

 そこで、「とらや」に近い作り方で、わが家で赤飯を作ったかというと、さに あらず。 たまたま国立新美術館に絵を見に行ったので、ミッドタウンの「と らや」を覗いてみようと、思いついたのは手柄だった。 秋から春の間だけ、 注文を受けて作るという「とらや」の赤飯を、まんまと食すことに成功して、 めでたい春の到来となった。