喫茶店の名前 ― 2009/02/16 06:52
作家の三田完さんが『銀座百点』2月号に「詩人と珈琲」というエッセイを 書いていて、「銀ブラ」というのは、銀座をブラブラ歩くことでなく、もともと は大正の初めに慶應の学生が銀座の喫茶店パウリスタへ、ブラジル直輸入の豆 で淹れた一杯五銭の珈琲を飲みに行くことから始まったという話を、マクラに 振っていた。
パウリスタで思い出したことがある。 東京オリンピックの年であった。 学 校を出て銀行に入った私は、銀座支店に配属されて集金鞄を提げて、毎日銀座 の街を歩いていた。 集金のついでに、釣銭を届けに行く喫茶店があった。 小 銭が支店の出納係で不足していて、パチンコ屋に集金に行っている先輩に回し てもらったりした。 その名がどうしても思い出せないのだ。 今は、もうな い。 最近、固有名詞が出て来ないことがある。 パウリスタは「サンパウロ っ子」だと聞いていて、その喫茶店も「○○っ子」を意味していたことを、か すかに思い出したのだった。 こういう漠然とした疑問に、ネット検索という 強い味方がいる。 南米の都市名と「っ子」を入れて、ブエノスアイレスっ子 が港の子、港っ子を意味する、男はポルテーニョ、女はポルテーニャだという のとともに、リオデジャネイロっ子が「カリオカ」だというのが出て来た。 喫 茶店の名は、そう「カリオカ」さんだった。
高校生の頃、志木に通うのに、五反田から、渋谷、新宿、池袋を経由してい た。 湘南から通ってくる友人たちと、帰りによく渋谷で引っかかって、生意 気にも喫茶店でコーヒーを飲んだ。 コロンバンなどにも入ったが、だいたい 「ロロ」という店に行った。 久しく名前を忘れていたら、同期の平井一麥(か ずみ)さんの『六十一歳の大学生、父 野口冨士男の遺した一万枚の日記に挑む』 (文春新書)に出て来た。
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