またぞろ福沢諭吉「心訓七則」の亡霊2009/02/23 06:45

 「一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事で す。」で始まる、福沢諭吉の「心訓」七則については、これまでもたびたび、そ れが偽作だということを書いてきた。 『福澤諭吉全集』別巻228頁や、第二 十巻の附録「鶏肋」(その六)で富田正文先生が偽作と断じているし、手近なと ころでは慶應義塾のホームページの「慶應義塾豆百科」98「福澤心訓」を見れ ば、その旨の断り書きがある。 「等々力短信」第968号(2006.10.25.)では、 「心訓」が偽作であるということから、清水義範さんが紡ぎ出した『心訓小説 福 沢諭吉は謎だらけ。』(小学館)を紹介した。

 2月15日の朝日新聞朝刊13面「朝日求人」の『仕事力』という連載インタ ビューで、北尾吉孝SBIホールディングス(株)代表取締役執行役員CEOは、 「学びは足りているか?」〈北尾吉孝が語る仕事〉の第1回(全4回)の冒頭 で、次のように語り始めている。  「福沢諭吉が言ったとされる「心訓七則」の中に、仕事にかかわる二つの教 えがあります。/「世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持 つことである」「世の中で一番さびしいことは仕事のないことである」。仕事が 人生に与える影響は大きい。雇用環境が日々変化する現在、この言葉はさらに 重みを増していると思います。」

 北尾吉孝さんは、2005年のライブドアによるニッポン放送買収問題で、フジ テレビのホワイトナイトとなったことで、テレビのニュース番組にしばしば登 場したので、どういう人物かは知っていた。 慶應義塾大学経済学部を、私の ちょうど10年あとに卒業、野村證券に入社した。 慶應義塾創立150年記念 事業に1億円を寄付したことも聞いていた。