雲助の「髪結新三(上)」の物語 ― 2009/07/18 06:53
「髪結新三(上)」の物語を書くとなると、たいへんだ。 でも、書くか。 白 子屋(しろこや)の庄三郎には、芸者だった妻のお常との間に、お熊と庄之助 という二人の子がいる。 庄之助は、年若から三道楽の放蕩者で、勘当同様に なっている。 お熊も派手に育てられたので、派手派手に着飾って、芝居は替 り目替り目に観に行くという風。 たいへんな器量よしで、色気づいたのが、 はじけて、奉公人で十八になる忠八を見初め、深い仲になる。
奉公人を信用せずに全部自分で商売をしてきた主の庄三郎が六十で中風の病 で倒れた上に、賊が入ってあるだけの金を持って行かれたのがケチのつき始め、 白子屋も左前になる。 白子屋は家運を盛り返すために持参金つきの婿を探し、 大伝馬町の大店・桑名屋弥宗右衛門の番頭で実直な又四郎を五百両とともに迎 える。 面白くないのはお熊、忠八といういい男がいるのに、四十男の又四郎 と、である。
5月4日、梅雨の最中である。 廻り髪結の新三がやってくる。 新三はお 店に出入りしていて、口がうまい。 奥のお熊のところにも顔を出し、衿を剃 ってくれ、といわれる。 いい女だ、何とかならないものか、と考えていると、 単衣ものの袖に、何やら書き付けが覗いていたのを、素早く抜き取る。 忠八 宛の愚痴の恋文だったので、忠八を呼び出して、それを渡し、お嬢さんを連れ 出して私の家に逃げたらどうか、お嬢さんも逃げる料簡だと、たきつける。 お 熊にも話すと、そこは無分別のお熊、逃げることになる。
晩方、和国橋の角に待たせた四つ手駕籠にお熊を乗せ、下剃りの勝蔵をつけ て、深川のはずれの富吉町の新三の家へ先にやり、新三と忠八は歩いてそこへ 向う。 雨が降り出した。 忠八は庭下駄で逃げて来ていて、新三に「でれ助 だなあ」といわれる。 照り降り町で、大黒の傘と吉原下駄を買う。 相合傘 で歩き始めたが、新堀のあたりで恐ろしい降りになり、風も出てきた。 新三 はどんどん先に行く。 忠八が濡れるじゃないかというと、新三は態度を一変、 「あの女は俺の色女だ、てめえはいっぺえ謀られたんだ、ここからさっさと家 へ帰(けえ)れ」。 しがみついた忠八を突き飛ばし、ぬかるみに倒れたのを吉 原下駄で額のところをばしっと殴る、額が割れて血がだらだら…。
明くる5月5日、いい天気になった。 白子屋の抱え車力の善八が、十両の 金を持って富吉町の新三の家へ掛け合いに行く。 お熊を荒縄で縛って押入れ に入れ、裸で酒を飲んでいた新三に、十両のめくされ金なんぞ、てめえにくれ てやると、言われてしまう。 善八は女房の入れ知恵で、町内の大親分「悪い 奴の中の悪い奴」、弥太五郎源七に頼んで(気の進まぬ親分の、妻(雌鶏)を先 に落として)、再び新三の家へ向うのだった。
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