児玉和子さんの句集『白梅の家』 ― 2009/07/24 06:35
児玉和子さんから、瀟洒な装釘の第一句集『白梅の家』(本阿弥書店)を頂い た。 見返しの挿絵は、亡き母上の手になるもので、句集の題名は<白梅の寂 けき家に眠りけり>、母上が亡くなった鵠沼のご実家の印象から取られている。 <籐椅子に母失ひし父の日々>の父上は、私の父とほぼ同年代、根っからのス ポーツマンであったという。 51頁の<砲弾の如寒鯉の沈みをり>から、和子 さんが九段で開かれた昨年の『夏潮』新年会句会で詠まれた<寒椿父に砲兵た りし日々>を思い出した。
児玉和子さんとは、『夏潮』立ち上げの暫定運営委員会で、初めてお会いした。 「ただ見ている役」ということで参加した門外漢の私などと違い、本井英主宰 とのお付き合いも、俳句歴も長い。 『白梅の家』は、その発端の昭和50年 から、平成19年までの三十余年にわたる俳句が収録されている。 好きな句 をいくつか挙げてみる。
鯰の眼右と左と見てをりぬ
猫の噂犬の消息日向ぼこ
豆飯や今日も試合に負けし子に
電話口の向かうも良夜なりといふ
思ふこと言つてしまひぬ枯茨
よいご家庭にお育ちになり、みずからもよきご家庭をお築きになった、その 穏かさ、温かさが、全篇を流れる。 かつて江國滋さんの本で「俳句の三本柱 は、たしなみと、つつしみと、はばかりである」というのや、「ほどのよさ」と 「さりげなさ」の大切なことを教わった。 和子さんの俳句は、まさにそれで ある。 「奇を衒う」というようなところが、まったくない。 考えてみれば パソコン通信句会の出で、受けを狙う目立つ句ばかり作っていた私などの下品 な俳句とは、氏素性が正反対なのであった。
コメント
_ 土尻洋子 ― 2012/05/13 11:30
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どんな人物なのかまったくしりませんでしたので、検索してしまいました。これから俳句を読んでみようと思います。