菊之丞の「三味線栗毛」2009/07/27 07:14

 そこで「三味線栗毛」という噺。 講談ネタであろうか。 酒井雅楽頭の妾 腹の次男、角三郎、父親との折り合いが悪く、大塚のケイセイヶ窪の下屋敷で、 清水吉兵衛という者が付いて、年百石の苦しい暮しをしている。 角三郎、夜 は書見、昼は「地方分権」の視察に、両国広小路奥山の見世物小屋で「目が三 つ、歯が二本」の看板につられて、下駄を見たり、一膳飯屋に入ったりする。  肩がこったので、呼んだ按摩が錦木、七つの時に疱瘡で盲人になったという。  角三郎が錦木に望みを訊くと、金が欲しい、十両を京へ送ると座頭になれる、 百両送ると勾当(こうとう)、一番の出世が検校で千両かかる、という。 楽し みは寄席で、落し噺が好きと、療治をしながら面白い噺を聴かせて、気に入ら れる。 錦木は角三郎に、ご家来がお大名になることはあるか、と訊く。 惣 録(検校の座順の最古参の者)の講義を聴く機会があり、骨組の講義で、大名 になる骨組を教わった。 角三郎の骨組がそれで、自分も同じ骨組だから、角 三郎は大名に、錦木は検校になるというのだ。 角三郎は自分がもし大名にな ったら、錦木を検校にしてやろうと約束する。

 錦木は具合が悪く、ひと月ほど寝込んでいた。 その間に、酒井雅楽頭がぽ っくり亡くなり、長男は病身で廃嫡、下屋敷の角三郎が酒井雅楽頭に、清水吉 兵衛は三百石のご意見番になった。 酒井雅楽頭といえば大名中の大名だ、角 三郎は今日から自分も検校だと、大手の屋敷に駆けつける。 門番は、殿は烏 金(からすがね、按摩から借りている金・日歩で借りる高利の金、カラスカア の翌日元利を返済する)など借りていないはずだが、と。 錦木、落語を聴 いていたのが出世の早道、一夜検校となる。 酒井雅楽頭となった角三郎、手 に入れたという名馬を曳かせる。 南部(?)三春の産で、名は“三味線”。 な ぜ“三味線”か、「余は雅楽頭、ウタが乗るから“三味線”、家来が乗っては、 撥(ばち)が当たる」