「浮世絵とは何か」が分かる展覧会2009/10/11 06:24

 三井記念美術館で「夢と追憶の江戸―高橋誠一郎浮世絵コレクション展」の 前期を見てきた。 慶應義塾創立150年記念と銘打たれているのは、高橋誠一 郎先生の没後、そのコレクションの内、約1500点が慶應義塾に寄贈されたか らである。 質の点では世界有数といわれる高橋コレクションは、全体では数 千点あったらしく、春画のようなものも含まれていたという。 展覧会に入っ たとたんの菱川師宣「衝立のかげ」は、一見女二人だが、実は男と女のからみ、 吉原でのこれからという場面だ。 組み物で、次第に春画に展開していくらし いが、それは慶應義塾の所蔵ではない。 高橋先生は、残念無念と思われてい るか、苦笑いをされているか。

 「浮世絵」とは、何か。 江戸時代に発達した風俗画の一様式、遊里と芝居 町に代表される都市の歓楽郷、いわゆる「浮世」に取材し、主要な表現手段と して大量生産のできる版画形式を用いた点に特色がある、とブリタニカ国際大 百科事典にある。 浮世絵版画技法は、初め万治年間(1658~61)に、菱川師 宣が「墨摺絵」を制作。 その後、延宝~正徳期(73~1716)頃、墨摺絵に筆 彩色する「丹絵(たんえ)」「紅絵」が流行、享保~寛保期(16~44)頃には「漆 絵」も行われた。 次いで延享期(44~48)頃、墨摺絵に紅や緑など2から3 色の色板を重ねて摺る板摺版画の「紅摺絵」を工夫。 それをさらに発達させ て、明和2(65)年鈴木春信らが多色摺木版画である「錦絵」を創始し、浮世 絵の黄金時代を迎えた。 『広辞苑』は、その主題を、遊里や芝居の情景、美 女・役者・力士などの似顔絵を中心とし、歴史画や風景・花鳥に及ぶ、と葛飾 北斎・歌川広重に代表される風景画にも目を向けている。

 高橋コレクションを見て、浮世絵のそれぞれの時代と主題のすぐれたものを きちんと集めてあるなあ、というのが感想だった。 帰って『三田評論』10月 号、渡辺保・渡邊章一郎・内藤正人という皆さんの「三人閑談」を見たら、「教 科書のような浮世絵の集め方」とあった。