志の輔の「ねずみ」2010/05/05 07:00

 志の輔は、「歌舞伎座の最終日だというのに」「ゴールデン・ウィークもこれ さえなければ、長い旅行に出かけられたのに…。まあ、ほかに行くところもな かったのだろうが、よく来てくれた」と。 各地の落語会での打上げについて のマクラ、以来酔っ払いが嫌いになったという、前に聴いたことのある函館「三 月・帆立の海渡り」をやったあと、青森での話になる。 津軽三味線の名手が 来て、三十分間、すごい迫力で弾いた。 なんでそんなに一生懸命弾くのか訊 いたら、寒いから、ちんたら弾いていると、凍え死ぬ、と。 一方、沖縄では 「カ、タ、ン。 カ、タ、ン」と弾く。 一生懸命弾くと、暑いので倒れてし まう。 ただ、客が寝てしまうので時々、突然「アイ、ヤヤー」と大声を入れ る。 そうした、「人」も旅の楽しみの一つだ、と「ねずみ」に入る。

 「ねずみ」の物語は、2006年4月30日の日記に歌丸のやったのがある。 志 の輔らしいのは、客引きに出ていた子供が、こないだ小さな「ねずみや」を見 落した客が八戸まで行った、とか、「ねずみや」は、趣もあるが、傾きもある、 といった所だろうか。 左甚五郎が彫ってくれた「福ねずみ」が動き出し、 「ねずみや」は大繁盛、一部屋、一部屋建て増しし、「とらや」を抜いて、仙台 一の大きな宿屋になったが、「質問。それが一番くやしい人は誰でしょう?」と いうのも、志の輔調。 「とらや」が飯田丹下という彫師に頼んで彫ってもら った「虎」ににらまれて、「ねずみ」が動かなくなる。 びっくりして、「ねず み」が動かなったとたんに、おやじさんの腰が立った。 左甚五郎がやって来 て、わしはねずみの父だ、ねずみの言うことを聞いてあげると、ねずみに話し かける。 「わしが見るところ、あの虎にはゆとりや風格がない。今聞く、お 前には魂を入れた,命を吹き込んだ。それなのにどうして、なさけないぞ、ねず み」「これはどーも、お久し振りで、毎日楽しくやっています。虎…、虎ですか、 あれ。私はてっきり、猫だと思いました」

 ここに一番気を配っているという志の輔の「ねずみ」、見事にしゃべったので あった。