鯉昇の「辰巳の辻占」2010/06/01 07:16

 鯉昇の可笑しさは、圧倒的である。 出て来て、何も言わずに、手をこすり ながら、客席を見回している。 それから、話し始める、何気ない言葉が、可 笑しい。 「皆様はご存知ないでしょうが、うちの町内に田中さんという方が いらっしゃいまして」、歳を取って来た鯉昇を気遣って、壜に入った薬をくれた。  骨が丈夫になる薬。 半分ぐらい飲んだところで、気がついた。 骨が丈夫に なったことが分かるのは、多分、骨上げの時だろう、と。

 伯父さんは、お前の話が腑に落ちない、それはお前が大きな無尽に当たった からじゃあないのか、セコな噺家じゃあるまいし、金を欲しがっているんだ女 は。 女の心根を試してみろと、伯父さんが源ちゃんに知恵をつける。 友達 と喧嘩をして、二人殺めた、大川に身を投げよう思うが、一緒に死んでくれる か、と。 お茶屋の二階の突き当たり、への八番に上がって、女を待つ。 前 の客が大散財した跡、サシミを、まだ大丈夫と食べる、間に合ってよかった。  巻きせんべいの中に辻占、「初手はさほどに思わぬけれど、今でもさほどに思わ ない」「富士の山ほど千円札積んで、端から五円ずつ使いたい」「あたしの方か ら、あなたのお手に、書いてやりたい離縁状」。 女がやって来て、話を聞き、 お前さんに殺されるような間抜けがいるの、喧嘩の元は何なの、魚雷でやられ たって喧嘩しないこともある、などという。 それでも女は、羽織お脱ぎなさ い、帯ももったいない、着物も脱いでシャツだけでと言い、源ちゃんは、マラ ソンに行くんじゃない、と。 ともかく、二人で大川へ行くのだが…。