底知れぬ寂しさからの脱出2010/06/06 06:40

 それは今年1月シニアのための交流雑誌『林遊倶楽部』の別冊として編まれた鈴木鐡矢著『遅 いおっかけ、「テレサ・テン」 トウ(←トウ小平のトウ)麗君(デン・リーチ ュン)雑感』だった。 鈴木鐡矢君は5年前の春、最愛の夫人をガンで亡くし、 自分の人生は終わった、後には長い底知れぬ寂しさと、野球の消化試合のよう に虚しい日々だけが残された、と感じたという。 その秋、ふと聴いたテレサ・ テンの柔らかく優しい中国語の歌声に癒されるものを感じる。 そしてCDを 皮切りに、DVDや書籍など彼女に関するものの収集が始まる。 中国には中学 時代から興味があったそうで、夫人を亡くして陸游の沈園(しんえん)のよう な漢詩を作りたいという心境になったこともあって、中国語の勉強に入ってい き、テレサ・テンの歌詞、DVDの字幕や伝記の翻訳にまで至る。 収集はして も、この段階まで進む人は、なかなかいないだろう。 その好奇心、探究心が、 中国語や随筆の勉強、同人雑誌に関わる人とのつながりへと、彼の世界を広げ て行き、深い寂寥から鈴木君を救い出すことになる。 そのプロセスがなんと も素晴らしく、感動的だ。

私はお礼のメールで、自分の経験を重ねた。 「私は2000年に、60歳を前 に、父が創業し兄と一緒にやっていた家業の工場を畳むことにしましたが、趣 味でやってきた書くことがあったことと、友人達の存在に助けられました。」