がん闘病記〔Hu-ten〕「風まかせ、日和まかせ」2010/06/09 06:58

 湊邦彦君は2008年7月30日に国立大阪医療センターで、食道がんでステー ジ3という宣告を受けた。 インターネットを見たら、5年後の生存率は20% 前後、平均余命は2年余りというデータがあったという。 4月には、毎年春 に内視鏡検査をしてもらっている20年来の町医者に胃、食道の検査を受けて いたが、見逃されていた。 5月、声が嗄れ始めたので耳鼻咽喉科医院で検査 を受けたが、ポリープなどはないといわれ、自分でストレスからと判断し、そ の解消に努めていたのだった。

 がん宣告から1か月後の8月30日、友人を中心にした10人に〔Hu-ten:001〕 「風まかせ、日和まかせです」というメールが発信され始める。 「心のバラ ンスを辛うじて保つ」ための記録、「一人の友人が、のたうちながらも、なんと か生きようとする日々を見守ってやってください」と。 私も、その10人の1 人であった。 〔Hu-ten〕は以後、不定期に発信され続け、2010年1月17日 [Hu-ten070]「前向に」が最後となった。 お別れ会では、その内40回分が本 に編まれて配布された。

 そこには、がんとの闘いの克明な記録、いろいろな治療方法の試みと変遷が、 その時々の心の動きとともに綴られ、当然会社や家族のこと、人生についても 触れられている。 最後の通信が「前向に」と題されたように、湊邦彦君は一 貫して「前向き」だった。 がんを、「病気と闘う時間もあるかわりに、自分の 人生を見つめなおしたり、死の準備をする時間がとれる。ありがたい病気です」 と言う。 奥さんも繰り返し「悲観的になるな」と励ましている。 「悲観し てもなにもいいことがない。楽観することから、闘病の気持ちが生まれ、自己 免疫力がつく。これが、がんをやっつけるエネルギーになるんだという考えで す」