「魚簗」「實梅」、私の選句と主宰選評2010/06/13 07:39

 「魚簗」と「實梅」の句会で、私が選句したのは、つぎの七句。

つゞけさま鰻がかかり雨後の魚簗    英

増水や魚簗への小橋はや外し      英

実梅捥ぐ納所坊主も総出にて      梓渕

梅落すには都合よき子沢山       ひろし

梅の実の丸みの如く願いごと      耕一

梅の実の底はほのかに桃色に      耕一

明日は雨青梅匂ふ厨かな        さえ

 上の内、主宰選にあったのは「納所坊主」だけだった。 主宰選からいくつ か、その選評とともに紹介する。

魚簗の簀の流れとどめて損なはず    梓渕

川流る魚簗へ向つて早くなり      やすし

大粒の星の懸かれる簗瀬かな      一郎

簗を越え水は坂東太郎なり       耕一

ポリバケツ透きて実梅の数およそ    ひろし

青梅の葉の重なりの蔭にかな      さえ

青梅のリカーに沈み静もれり      良

実梅落つ快川禅師最期の地       和子

青梅の取り尽くされし夜半の雨     なな

 <魚簗の簀の流れとどめて損なはず>…流れが簀で止まっているといえば止 まっている、止まっていないといえば止まっていない。それを詠んだ「損なは ず」がうまい。 <川流る魚簗へ向つて早くなり>…原句は「川の流れ」、「の」 を抜かした方が動きが出る。 <大粒の星の懸かれる簗瀬かな>…こういう大 きくとらえた句もいい、ロマンチックな視線。句を作る時、われわれはどうも、 裏から見て、何か落ちていないかなどと考えがちなものだ。 <簗を越え水は 坂東太郎なり>…「簗を越え」を「簗越ゆる」とした方がいい、格調が高くな る。 <ポリバケツ透きて実梅の数およそ>…「数およそ」が巧い。ものが見 えていくように言葉が並んでいる。 <青梅の葉の重なりの蔭にかな>…軽い 句。どうでもいいような景をやわらかい言い方で詠むことが、俳句の世界には ある。星野立子など。 <青梅のリカーに沈み静もれり>…「沈み静もれり」 がよく、いい感じの景になった。