小沢一郎さんと福沢2010/09/08 06:52

 同じゼミで卒論も一緒に書いたその友人が、世川行介著『泣かない小沢一郎 (あいつ)が憎らしい』を送ってくれたのは、8月25日の<等々力短信>「後 藤象二郎と福沢」を読んで、「小沢一郎さん(年齢は一つ下だが、卒業は三年あ と)のことを、福沢先生ならどう思われるだろうか」と、思ったからだという。  この本が出版された8月30日の、ちょうど一年前に行なわれた衆議院議員選 挙で、政権交代が実現した。 その直後に、小沢さんと福沢について書いてい たので、お礼のメールに添付したのだが、以下に再録する。

 政権交代と『民情一新』<小人閑居日記 2009. 9.4.>

 本当は円生没後三十年の落語研究会の話を、だらだら書いている場合ではな かった。 その間に、世の中がひっくりかえった。 8月30日の衆議院議員選 挙の結果、民主党が単独過半数(241議席)を大幅に上回る308議席を獲得し、 政権交代を確実にした。 自民党は119議席、選挙前勢力の3分の1余に激減 する惨敗で、1955年以来続いた自民党「第一党」体制も終わった。 政権交代 可能な二大政党制を目指して衆議院に小選挙区比例代表並立制が導入されて 15年、総選挙で野党が単独で過半数を得て政権が交代するのは戦後初めてだ。

 慶應をほぼ同じ頃に出た小沢一郎さんという人、個人的には好きではないが、 その主張していることは、実は福沢諭吉の説いていたことと同じである。 二 大政党制による政権交代、官尊民卑の打破、予算の裏付けのある地方分権(地 方から始めて中央へ)。 1993(平成5)年に8党連合の細川「非自民」政権 をつくったのも、55年体制を脱して政権交代のある政治をつくらないと日本は 後れをとる、そのためには小選挙区制だと推進したのも、小沢一郎さんだった。  そして今回、小選挙区制の利点を生かし、選挙戦略の知恵を尽して、民主党を 勝利に導いた。

 国会開設の11年も前の明治12(1879)年8月、福沢は『民情一新』を出版 した。 その最終、第五章は「今世に於て国安を維持するの法は平穏の間に政 権を受授するに在り。英国及び其他の治風を見て知る可し。」である。 イギリ ス議会の二大政党による円滑な政権交代の事情を紹介、推奨し、どんな政権で も三、四年で国民の間に不平不満を生じるものだから、その時期を誤らずに新 旧の交代をする働き(制度)は、機転の妙所というべきだと言っている。 今 年は、『民情一新』からちょうど130年、大日本帝国憲法発布(明治22(1889) 年)から120年に当たる。