「鯊」と「葡萄」の句会2010/09/12 06:54

 台風による大雨の翌日、ようやく少し涼しくなった9日は、「夏潮」渋谷句 会だった。 兼題は「鯊(釣)」「葡萄」、8月はお休みだったので、ひさしぶり の感じ。 すんなり出来た、つぎの七句を出す。

 江戸前の鯊天ぷらの軽さかな

 呑み込みし針出すものか鯊の面

 釣り上げし鯊たちまちに天麩羅に

 びりびりと底へ引き込む鯊の意地

 葡萄来て残暑に滋味と礼を書く

 皮食へる種なし葡萄無精向き

 紫に爪を染めつつ巨峰食ふ

 結果は、例によってというか、「鳴かず飛ばず」だった。 「江戸前の鯊」を けん詩さん、「びりびりと」をななさん、「紫に」を主宰が採ってくれて、わず かに計三票。 「巨峰」が季題になるか、「マスカット」もあるし、まあ認めら れるだろうとのこと。 だれもが経験することを「きっちり」と詠んだ、と。  どうも、すんなり出来たということは、相変わらず、全体に散文的、説明的で あるなあと、反省したことであった。

 私の選句は、つぎの七句。 淳子さんの句、幼い時によく父に連れられ、羽 田近辺で鯊釣をしたことを思い出させてくれた。

 鯊船の船頭ばかり釣れてをり      梓渕

 鯊の竿くくる自転車子も乗せて     なな

 鯊釣られまなこ大きく見開きぬ     良

 離陸する飛行機ながめ鯊を釣る     淳子

 なだらかな坂登りつめ葡萄園      梓渕

 葡萄描く一粒づつに光置き       和子

 青ぶどう娘は一つ愚痴を言ひ      正枝

 「なだらかな坂」の句、主宰の選評で、甲州の下の方は田圃などがあるよう な、斜面のやわらかな景が詠めているが、「登りつめ」と複合動詞にすると、言 い過ぎて、安直で理屈っぽくなってしまう、という話があった。 ほかに〈水 門の下群れあそぶ今年鯊〉の句も、同様に「群れあそぶ」が言い過ぎで、「水門 の下にあそびて」としたほうがよい、と。