鯉昇の「味噌蔵」 ― 2011/01/02 07:31
出て来た鯉昇は、しばらく黙っていて、ニャッと笑った。 えー、日本人の 寿命が延びているそうで、役所の記録では150歳、180歳という人もいるらし い。 体が資本の業界なので、熱演はしないようにしている。 去年は、みん ながマスクをしていた。 客席にも沢山いて、表情がわからない、楽しんでい るのか、苦しんでいるのか…。 マスクが品切れになった時、先輩のおかみさ んが心配性で、北海道へ旅に出ていた先輩にありったけ買ってくるようにとケ ータイがかかった。 たまたまマスクメロンの売場の前にいた。 しばらくは、 メロンの煮付けがおかずになった。 去年の1月4日、女房がインフルエンザ に罹った、熱が80度出て、体がバラバラになる感じだという、医者が風邪薬 をくれて、副作用で時々異常行動が出る、と。 異常行動というのは、ひと頃 の草彅剛のようなもの。 年始の挨拶を口実に飲み歩く時期なのに、断わりま した、五軒目は…。 家へ帰ると、女房が三つ指ついて出迎えて、お帰りなさ いませ、という。 食事も、私の大好物ばかり並んでいる。 原因を考えると、 風邪薬。 未だに服用だけは続いている。 はなの師匠の小柳枝は、稽古にな るから野宿をしろと教えた。 段ボール二枚と古新聞紙で、阿佐ヶ谷近くで寝 る。 寒いけれど、段ボールと古新聞は、寝具だと思った。 てっきり、ほか の師匠も、野宿をさせるのかと思っていた。 集合住宅に住んでいるが、下の 家が寒がりの一家で、秋口から目一杯暖房をする。 下の家が里帰りすると、 寒い。
歳でも、嫁持たない咄家が、ずいぶんいますよ、と「味噌蔵」に入った。 味 噌屋の吝嗇兵衛さん、おかみさんは御まんまを食べるからともらわない。 親 戚が、親類づきあいをやめる、商売物の味噌の取引をやめる、と脅したので、 婚礼の費用は皆さんでと条件をつけて、嫁をもらった。 嫁さんを、(腹が減る ので)ささやくように呼んで、夜は傷むから足袋を脱げ、着物も脱いで、お腰 だけになって、と。 自分は背中に畳の跡がつく風呂敷のような蒲団にくるま って、別々に寝ていたが、ある寒い晩に耐えられず、二階の嫁さんの(嫁入り 道具の厚い)蒲団に入って寝ると、暖ったかい。 つい、毎日暖ったかい蒲団 に寝ていると、おかみさんのおナカに暖ったまりのかたまりが出来た。
番頭の入れ知恵、実家で費用向こう持ちでご出産、お祝いのご馳走があると いうので、貞吉を供に、出かけた間に、18年奉公して、おかずは8年に一度、 オリンピック・万博・オリンピック・おかず、実のない味噌汁で「ソ汁」とい う不満が爆発、番頭も帳面をドガチャカしての、ご存知大宴会となる。 鯉昇 は快調に演じて、楽しい「味噌蔵」になった。
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