志ん輔の「夢金」 ― 2011/01/24 07:06
志ん輔は、いつも渋い形(なり)で出て来る。 元旦になると、(気持が改ま って)オッとなるのは、何だかわからない。 大晦日は芸人にとって一番いや な日で、本当にこんなことをやっていていいのか、自分を責めてみたりして…。
けちん坊と、欲張りは違う。 けちん坊は、可愛げがある。 息を吐くのは いや、ちょっとだけ吐こうとする。 欲張りは、性質(たち)が悪い。 人の 物が欲しい。 夢の中で、熊公、「百両欲しい、二百両欲しい、百五十両でもいいよ」と言っ ている。 雪のしんしんと降る晩、どんどんと船宿を叩く者がいる、さては熊 公の寝言で、泥棒を呼び込みやがったか。 妹が雪に震えて困っておると侍、 25,6の浪人者、三白眼、鼻筋が通って額に刀創、一癖も二癖もありそうな男。 娘はご大家のお嬢様という風で、17,8、品のある顔立ち、半四郎鹿の子の着物 に、なぜか足袋はだし、ぽっくりの鼻緒が切れたという。 浅草の芝居見物の 帰り、深川まで屋根舟を一艘やってくれないか。 舟はあるが、漕ぎ手がいな い。 何とかならんか。 骨折り酒手は十分に遣わす。 居眠りの欲張り熊公、 魚心あれば水心、御伴しましょう、となる。
女将が形だけみよしを押しやり、雪の大川に、舟が出る。 竿から艪へ。 ピ ュー、雪と風が物凄い。 船頭、金の話に半口乗らんか、艫へ出ろと男。 娘 は懐に百両持っている、店の若い者との不義で家を出たが、持病の癪。 手伝 わんか。 いくらくれる。 金二両。 あまりセコイから、舟をひっくりかえ すぞと脅すと、泳げないのか山分けになる。 舟では証拠が残る、中洲で殺ろ う、侍が中洲にピョンと上がったところで、舟を出す、「ざまあみろ、どぜぇー もんざむれぇー」。
本所の大きなお店の娘だった。 命の恩人、娘が助かった身祝い、これで一 杯やって下さい。 金、百両―ッ。 しっかり握ると、気持が悪い、あまりの 痛さに目がさめた。 熊公、夢の中で、自分の急所を握っていた。
志ん輔、渋い形が身についたというか、どっしりとした風格が出て、安心し て聴いていられるようになった。
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