「元気なうちの 辞世の句」2011/03/19 07:21

 図書館の俳句の棚に、『元気なうちの 辞世の句300選』(中経出版・2004年) という変な本があった。 金子兜太・監修、坪内稔典・選者、荒木清・編者、 一般からの応募を受け付けて、特選一名、優秀賞二十名を選んでいる。

 阪神淡路大震災後のことで、ここにもこんな句があった。

花吹ぶく戦争に生き地震(ない)に生き 竹島清歩(80)兵庫

月涼し戦災に耐え震災に耐え      田住昇三(76)兵庫

 300選の中から、私の選んだ10句。私も恥しながら古稀になる。

人々に恵まれて生き良夜かな      古舘泰子(59)東京

人の佳さのみ褒められて遍路笠     本田武(69)和歌山

なんとなく生きてゐましたおけら鳴く  伊藤泉(68)滋賀

無為にして生かされている蟇動く    水島冬雲(76)北海道

大方を曖昧に生き瓜きざむ       石井ひさ子(75)千葉

柿食へば少しまじめに考へる      谷さやこ(45)愛媛

まだ遊び足らざる釣瓶落しかな     平野周子(56)神奈川

新走墓にかけるな勿体ない       久保田元(68)神奈川

(新走(しんばしり)は今年酒、新酒のこと。)

われら古稀銀杏若葉に母校在り     阿知波天然(71)千葉

わたくしも河馬も昼寝をしたくなる   大塚雅彦(28)埼玉