兼好の「百川」2011/07/02 05:39

 三遊亭兼好、小柄で撫で肩、小じんまりと、軽い感じで出てくる。 馬治に 続いて黒の羽織に、生成りの着物。 高い声を出し、畳みかけるように語る。  「笑点」に出ている三遊亭好楽の二番弟子、昭和45(1970)年の会津若松生れ、 二松学舎大学卒、好楽に入門した時は、勤め人で妻子があったという。 この 会では、真打になる直前、まだ好二郎で「一分茶番」を聴いて、褒めたことが あった。

 「百川」、大ネタである。 「四神剣」を仕込むのに、まず江戸ッ子の祭自慢、 将軍様もご覧になる天下祭から入ったのは、よかった。 河岸の若い衆が、日 本橋浮世小路「百川」の二階で、去年の祭で金が足りず、質入れした「四神剣」 をどうしようかと相談をしている。 祭が近づき、持ち回りで隣町へ渡さねば ならない。 二階からお呼びだが、髪結が来て女中連中がみんな髪を解いてし まったために、口入屋の千束 (ちづか)屋から、紹介されてきたばかりの、田舎 者の百兵衛が、やむなくご用を聞きに行く。

 「主人家のかかえ人」を「四神剣の掛合人」と、聞き間違えられ、くわいの キントンを丸呑みするはめになる。 兼好は、百兵衛が羽織を着ているから丁 度いいというのはやらなかったが、河岸の若い衆の初五郎では、わざと錆びた 声を出し、百兵衛にまず酒を勧めて、酒はやらねえと言われると、では甘味を と、くわいのキントンを小皿に出すことにした。 「ここのところは、わしの 顔をつぶさずに、呑み込んでもらいたい」「できなかったたら、ごめん、ネ」

 大ネタへの挑戦、まだまだ道は遙かで、その第一歩を踏み出したというとこ ろだろうか。