雲助の「山崎屋」前半2011/07/21 06:33

 先月の「よかちょろ」の続きである。 雲助は、吉原を北国(ほっこく)、北 廓(ほっかく)、品川を南、南品(なんぴん)と言ったというところから始めた。 遊 女三千人御免の場所、吉原には遊女が脱り出るのを防ぐために、医者以外は駕 篭では入れない。 花魁道中が出来るのは、『吉原細見』で入山形に二つ星、仲 の町ばりの花魁だけで、こういう花魁には新造(しんぞ)がつく、番頭新造、留 袖新造、振袖新造。 そういう花魁は昼夜で三分というが、それは揚代金で、 もろもろに莫大な御足がかかる。 花魁がアリンス、ザマスという里言葉を使 うのは、「起きてけつかれ」では、まずいから…。

 「よかちょろ」の若旦那、二階に閉じ込められ、ひとりで花魁に膝をつねら れた場面をやって「いてぇー」と大声を上げる。 番頭の久兵衛が止めに行く と、三十両用立ててくれ、という。 三十両は大金、とても出来ない、声の大 きいのは地声、どうせ野暮。 ごまかしてくれ、初めてごまかすわけでなし、 あの年頃は24,5か27,8か、いーーい女だった。 先月の二十日、隣町のお湯 屋に行ったら、その女が出て来て、裏道に回り込んだ。 行き止まりの奥から 二軒目の左、清元なにがしの看板、近所で聞けば、さる方のお囲い者、横山町 の鼈甲問屋の番頭さんで久兵衛って言えば、お前のことじゃないのか。 四五 日前、お前がおまんまを食わずに出かけたのを、つけて行った。 庭について 回って、台所の方へ行って、隙間から覗くと、乙な年増と差し向え、声の大き いのは地声、どうせ野暮。 私も時々は柔らかくなる、あれは妹の姪の又従姉 妹の叔母。 汗を拭きな、この店もいずれは私の身代だ、三十両持って、すぐ 吉原へ、花魁に会う、と。 相談だがと、番頭は言う。