雲助の「山崎屋」後半2011/07/22 05:39

 番頭の相談は、こうだ。 その花魁とご夫婦になれば、道楽は止みますか、 こういうことには、表通りも、裏通りもある、三、四か月辛抱して下さい。 花 魁を親元身請けして、町内の鳶頭(かしら)の家に預かってもらう。 若旦那の 落した財布を鳶頭が拾い、大旦那が礼に来たところへ、御殿女中のような格好 でお茶を出す。 大旦那は、誰だと、根掘り葉掘り聞く。 女房の妹で、長く 屋敷奉公をしていたので、持参金が三百両、箪笥長持が五棹。 偉い、ごまか し慣れている。

 丸ノ内の赤井様に百両の掛取りに行く用がある。 番頭は若旦那をと言い、 大旦那は知恵のない子に知恵を授けるようなものだというが、番頭は百両持っ て来なければ勘当という手もあるけれど、今度ばかりは間違いないと請け合う。  若旦那は百両落とし、鳶頭が拾う。 お礼は半紙の一帖でもと言う大旦那に、 二十両包むか、にんべんの鰹節の切手と番頭、両方出しても切手を取るだろう、 と請け合う。 鳶頭は江戸っ子、昔からの出入り、切手は頂戴するが、二十両 は思し召しで結構と。 鳶頭も偉いが、請け合った番頭も偉い、と大旦那。

 そこへお茶を持って出る。 いい器量だ、女房の妹? 姉妹で顔がちがう。  箪笥長持が五棹、持参金が三百両と聞いて、大旦那、そろそろ倅にも身を固め させたい、倅がいやだと言ったら、私が貰う。 どこのお屋敷にお勤めかい。  北国ざます。 北国というと、加賀様かい、お女中も多いんだろうね。 三千 人。 道中はするのかい、お女中は駕篭で行くのか。 道中はするんざます、 駕篭の往き来はならない、三つ歯の高いぽっくりで、日の暮に出て、武蔵屋ィ 行って、伊勢屋ィ行って、大和の、長門の、長崎の…。 おいおい男の足だってそんなに歩けない。 諸国を歩く六十六部、足の達者が飛脚と天狗……お前 には六部に天狗が憑いたんだな。 いいえ、三分で新造がつきんした。