轟亭の小人閑居日記 　　　馬場紘二

　大河ドラマ『江』で、茶々、初、江の浅井三姉妹のごく若い時、お市の方が 柴田勝家に嫁した頃、気になっていたことがあった。　宮沢りえの、口の横の 線である。　デジタルテレビの映像では、三姉妹の中で一人だけ、その線が目 立って、ちょっと若い娘役は無理ではないか、と思われたのだ。　18歳の1991 年の写真集『Santa Fe』(篠山紀信撮影)から20年(何でそんなことを憶えてい るかというと、パソコン通信を始めた頃で、話題にしたことがあった)、宮沢り えも38歳になっている。

　芸能界に明るい友人によると、HD時代(High Definition高品位テレビ)の時 代になり、皺の一本一本が見えるようになったので、スターといわれる女優さ んには、専属のメークさんが付くようになっているのだそうだ。

　メーキャップの話をしている番組で、あの線を「ほうれい線」と言っていた。　 字幕には漢字でなく、ひらがなで出ていた。　「ヒトの鼻の両脇から唇の両端 に伸びる二本の皺」のことで、漢字表記には、(1) 豊麗線、(2)法令線、(3) 豊 齢線、などというのがあるらしい。　(1)と(3)は、当て字で、 (2)法令線は、中 国の面相学における法令紋に由来するという。　「頬齢線」と書くのは、語源 的に誤りだそうだ。　英語はnasolabial fold。　医学関連分野(美容外科学を含 む)の専門用語では、鼻唇溝(びしんくう) cleft lip nose というらしい。