生活の中のデザイン<等々力短信 第1030号 2011.12.25.> ― 2011/12/25 03:57
「DOMA秋岡芳夫展」を目黒区美術館で見てきた。 「モノへの思想と関係 のデザイン」という、わかりにくい副題がついている。 秋岡芳夫さん (1920-1997)は、工業デザイナーで、童画家、学習雑誌の付録の設計、木工家、 東北工業大学教授、地域興しのプロデューサー、道具の収集家などの多彩な顔 を持つ。 目黒区中町のDOMA(日本の伝統的な対話の場・生産の場である「土 間」をイメージ)と名付けた自宅を拠点に活動したので、目黒区美術館での展覧 会開催となったのだろう。
秋岡さんは、50年代に金子至、河潤之介と三人で「KAK(カック)」というデ ザイングループを立ち上げ、ラジオやカメラ機器、家電製品、オートバイなど の工業デザインで実績を積み、「メカに精通したデザイナー」として時代の波に 乗る。 60年代は、学習研究社発行の『科学』『学習』の教材デザインにも参 画、飛躍的に販売部数を伸ばす。
私がテレビ番組や本などで秋岡さんの影響を受けるようになったのは、60年 代後半以後、家業のガラス工場で食器の生産にかかわるようになり、家庭を持 った時期だった。 高度成長期の当時、秋岡さんは企業の生産性を重視するデ ザインの在り方に疑問を感じて、視点を個人の暮しや日本各地の手仕事や生産 者に移していた。 そこから、良いものを永く使おうと「消費者から愛用者へ」 や「手の復権」という言葉が生まれた。
1980(昭和55)年10月、「生活の中のデザイン―日本の知恵と伝統」と題した 朝日ゼミナールで、秋岡さんの「生活と身体で測る」という講義を聴いたノー トがある。 つぎの道具類の共通点は何か? そば猪口、二合五勺入りの昔の 徳利(ストレートの形)、ごく普通の湯呑、かんな(大きい方から二番目の力仕事 用)、お茶の缶、アルコールやベンジンの瓶、ビール瓶、ワインの瓶。 ぜひと も実際に測ってみて頂きたいのだが、これら全て、直径が75ミリになってい る。 日本で昔から「二寸五分もの」と呼ばれてきたこれらの道具類は、 (1)指先で軽く持てる、(2)力を入れるのに適当、(3)男女兼用の「手頃な」―、 握り寸法として、生活の中で「身体に聞いて」作られてきた。 古今東西の人 間がバラバラに作ってきたものが、同じ寸法になっているのが大変面白い。
展覧会を見て、元来土足用の外国製の椅子の脚を短く切ったことや、いろい ろな用途に使え(一器多用)、入れ子なので保管や地震にも強い「そば猪口」が、 わが家にあるのは、秋岡芳夫さんの影響だったことを、あらためて思い出した。
コメント
_ おこじょ ― 2011/12/25 23:31
_ 轟亭 ― 2011/12/26 08:40
最終日に間に合ってよかったです。 神奈川県立近代美術館・鎌倉の
「シャルロット・ペリアンと日本」(1/9まで。月、12/29-1/3休)は、ご覧
でしょうか。 私は見ていませんが、ご興味の範囲かと思います。
一味、というのが愉快です。 昔「おこじょ」の小さな写真集が家にあり
ました。 とてもかわいいですよね。
_ おこじょ ― 2011/12/26 22:22
「シャルロット・ペリアンと日本」、こんな展示もやっているのですね。教えてくださってありがとうございます!ぜひ行きたいと思います。
_ 轟亭 ― 2011/12/27 04:28
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「消費者から愛用者へ」 という言葉にピンと来て、これは私がつねづね思っていることと関係があるに違いない!と、思い、見に行ってまいりました。展示は今日までだったので、間に合ってよかったです。
高度成長期に、すでにこのような視点を持っていた人がいたとは驚きです。更に、以前から気になっていたスポークチェアとその発展形の椅子に、ここで出合えるとは、二重の感激でした。