本駒込、文京区勤労福祉会館の句会2012/06/01 03:53

 それからの時間、私は根津神社方面へは行かず、千駄木に降りて、その周辺 で過ごした。 汚い帽子をかぶって行ったので、山形米沢の牛やの出店、日乃 本帆布に寄って、夏の帽子を買った。 「いせ辰」や「菊見せんべい」を覗い て、あとは喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら、俳句の推敲をした。 「錻 力」が「ブリキ」とわかり、昨日の句になった。 「海軍飛行兵曹長」、兵曹長 は「海軍の准士官。少尉の下、兵曹の上の位」と知り、「海軍」を取ってもよい ことがわかった。 季題を入れるところが出来て、「夏の空」が浮かぶ。 『歳 時記』の「夏の空」、入道雲の夏空だけでなく、初夏・晩夏のも趣があるとあっ て、使うことにする。

 3時から、幹事の善兵衛さんが探しておいてくれた文京区勤労福祉会館(本 駒込4-35-15)で句会となった。 私の選句した句は、つぎの七句。 主宰の句 を、三句も採っていた。

軽暖へ木の香あふらせ風呂桶屋     英

古簾垂れて吉川錻力店         英

へび道の撓はみ撓はみに花茨      英

薫風をさらりと受けて坂を降り     孝治

燃え尽きて今は静かな躑躅山      孝治

葉隠れに仄(ほの)と明るむ実梅かな  かおる

新緑の根津で門出の二人かな      貴聖

私の出句は、貴聖、孝治の「両タカ」さんがたくさん採ってくれて、この日 のトップ賞となった。 採ってくれたのは、〈裏側はひんやりとして竹の秋〉か おるさん、〈夏空や飛行兵曹長の墓〉英主宰・かおるさん・孝治さん、〈薄暑光 谷中に古き錻力店〉孝治さん・貴聖さん、〈源平の二色空木は赤が勝ち〉孝治さ ん・貴聖さん、〈門前の紫陽花のはや咲き初むる〉貴聖さん、〈赤穂義士ゆかり の寺の樟若葉〉貴聖さん、〈白塀の眩し過ぎたる五月晴〉英主宰。 主宰の選評、 〈夏空や飛行兵曹長の墓〉…翳りのある夏空、飛行兵曹長はどういう役目をし た人か、操縦士ではないだろう、〈白塀の眩し過ぎたる五月晴〉…印象の明瞭な 句、近代的な家だろうか、梅雨の晴れ間の本格的な夏。

 南北線で帰ろうと駒込へ出たら、家内の中学時代の同級生で、この日、クラ ス会で家内たちと一緒に横浜の三渓園へ行った本駒込在住の川口さんが、ご自 宅へ帰る途中のところに、出っくわした。 東京に住む千二百万人の一人に、 偶然お会いしたことになる。 句会につづく奇遇、僥倖であった。

海外では通じない「和製英語」2012/06/02 02:44

NHK・ Eテレ「0655」に『これを知っていると、いばれるの唄』というの があって、今は「海外では通じない『和製英語』編」というのをやっている。  なかなか面白い。

コンセント outlet (差し込むほうはplug)/ガソリン・スタンド gas station /ボールペン ball point pen /シャープペンシル mechanical pencil /モーニング・コール wake-up call /Yシャツ shirt /トイレ ット(でも通じないことはないが△) (公共の建物で)rest room, (個人の 家庭で)bathroom /ドライバー(ねじまわし) screwdriver /ドライバ ー(運転手) driver /フライドポテト French fries /ストーブ heater  /電子レンジ microwave(正式にはmicrowave oven)/ベビーカー  stroller

なんていうのが、出て来る。 だいたいはアメリカ英語で、ネイティブの発音 もつく。

和英辞典をみると、イギリス英語だと、ガソリン・スタンド petrol station  /シャープペンシル propelling /ベビーカー push chair となるようだ。  もっとも、stroller やpush chair は「腰掛式乳母車」で、「寝かし式乳母車」 は baby carriage 〔buggy〕イギリスは pram となり、英語で baby car は 小型(豆)自動車を指すという。

 日本で経験豊富な意味で使う「ベテラン」は、英米で veteran 退役軍人に なるそうだし、他にもいろいろある。 よく言うのは、ナイター night game /プレイガイド ticket agency/カンニングは cheating,  cribbing だか ら、カンペーは crib(sheet), cheat sheet /有名人のサインは  autograph (署名はsignature、英語でsignは合図の意味になる) /運動競 技のフライング breakaway, イギリスは premature start、フライングする  jump the gun, make a premature start だそうだ。  この程度でも、いばれるかしら?

 『夏潮』6月号、誰やらの句にこういうのがあった。

消防団ベテランばかり野火守る

9月古今亭志ん陽になる朝太の「のめる」2012/06/03 03:59

 31日は、第527回の落語研究会だった。

  「のめる」    古今亭 朝太

「転宅」     柳家 三之助

「不動坊火焔」  柳家 権太楼

       仲入

「棒鱈」     柳家 さん喬

「浜野矩髄」   古今亭 菊丸

 朝太は、丸顔、垂れ目、太目の体型、2008年9月の志ん朝追悼落語会で「道 灌」を、去年の2月「熊の皮」を聴いたことがあった。 顔と名前を覚えても らいたいといい、でも名前がかわるという。 9月下席から真打昇進、志ん陽 (よう)になる。 落語研究会では、二ッ目最後の高座だ、と。

 なくて七癖、あって四十八癖、と「のめる」に入る。 「つまらねえ」が口 癖の留公と、もし言ったら50銭の罰金という賭けをした、「一杯のめる」が口 癖の男。 ご隠居に知恵を借りて、印半纏を着て、手に生のヌカをつけ、ご丁 寧に頭からヌカをかぶり、阿部川餅みたいになって、留公の所へ。 おばさん が送って来た大根百本、一斗樽がないので、醤油樽に漬けようと思うのだが、 つまるだろうか? そりゃお前「余るな」。 気が付いちゃったから、ダメだ。  その留公、羽織を着て、伊勢屋の婚礼に行くという。 実は留公が橋渡しをし たのだと聞いて、思わず「そりゃ一杯のめるナ」。

 50銭取られ、もういっぺんご隠居に相談。 湯へ行こうと誘いに来る留公の 前で、留公の好きな詰将棋を考えている。 持ち駒は金、銀と二歩での、王の 都詰(盤の中央での詰めの由)、千三つ屋といわれる髪結床の親方に教わったこ とにする。 好きなことだけに夢中になって、思わず「つまらねえ」と言って しまった留公、「生涯の知恵、いっぺんに出しやがったな、倍の一円やろう」。  「一円? そいつは有難い、一杯のめる」。 「おっと、差っ引きだぁー」

 朝太、真打昇進間近に、ふさわしい出来だった。

三之助の「転宅」2012/06/04 02:03

 にこやかに出て来た三之助は、小三治の弟子、調べたら2009年3月の第488 回に「のめる」を演っていた。 回りを刈り上げ、頭のてっぺんの真中だけが 黒い。 学生の頃、泥棒に入られた。 帰ったら、部屋ん中がメチャクチャに、 ひっくり返っている。 警察が来て、入られた方がまず指紋を取られる。 泥 棒のと、区別するために…。 何も盗られていないことがわかった。 盗られ る物がなかった。 鍵を見て、警察の人が首を傾げている。 これは鍵の内に 入らない、と言う。 内側からボッチを押すと、鍵のかかるタイプなのだが、 泥棒が開けるのに一秒もかからないそうだ。 三之助が開けるのには、鍵を探 したりして、何秒もかかるのに。 鍵をかけるから、狙われた、鍵をかけたか ら、入った、のだそうだ。 一目置く(三之助、「ヒトモク」と言ったが、「イ チモク」だろう)、尊敬する、泥棒を。

 泥棒でもやろうかと、泥棒になった「デモ泥」がいると、「転宅」に入る。 浜 町あたりの、黒板塀のそれらしい家、お妾さん、二号さんに、この五十円はい つものほかだ、と旦那が金を渡している。 あんないい女に、あの爺イ、金の 力だなと、裏から入った。 そのままの食卓の、燗冷ましの酒を飲む、いい酒 だ、たまらない、名も知らぬ焼魚を食べ、小鉢のヌルヌルを、旨い旨いとやっ ている。 何だい、お前さん。 静かにしろ、おら泥棒だ、騒ぐと二尺八寸の 段平物を振り回すぞ。 よーよー、音羽屋。 お前さん、旦那の呼んだ噺家か、 幇間なんだろう、驚いたところへ、カッポレかなんか踊ろうってんだろう、こ のカッポレ泥棒。

 驚かない女、実は同じ商売だという。 マナカ? 組合入ってないでしょ?  相談に乗ってもらいたいことがある。 旦那と別れて、商いでも始めようと思 うんだけれど、頼りになる人、男らしい人はいないだろうか。 いねえことは ねえ、目の前にいるじゃねえか。 かみさんなんていねえ、ひとりぼっちだ。  本当かい、嘘つきは泥棒の始まりっていうよ、もう泥棒か。 一年、いや半年 でいい、一緒にいてくれないかね。 本気なの、それ、こんないい女、生涯可 愛がるよ。 で、固めの盃となる。 なんだいこれ、有難いな、ずっと真面目 にやって来て、よかった。 夫婦(めおと)になって、名前を知らなかった。  いたち小僧のさいご兵衛、高橋お伝の孫の半ぺんじゃなくて、本当は菊。 名 門だ。 お菊、お前さん、と呼び合う。 なんだいお前さん、泣いているね。

 泊っていくというやつを、二階に用心棒の剣術の師匠と、空手の先生がいて、 今、湯に行っているという。 明日、旦那と午前中に話をつけおくから、昼過 ぎに来ておくれ、合図に三味線を弾くから。 お小遣いあげようか、と紙入れ を見ると、一円二枚に、十円三枚。 お前のものは私のもの、十円札は貰っと く。 

 翌日の昼過ぎ、やってきた泥棒。 三味線が鳴らないので、タバコ屋に入り、 お向こうの家の話を聞く。 「お菊」というところをみると、親類の方ですか、 ゆんべの何をご存知ない。 これこれこういう訳で…、間抜けな泥棒で、ご覧 のように平屋なのに、二階に用心棒がいるとお菊さんがいうと、帰って行った そうで。 ゲジゲジ眉毛に、金壺眼、乱杭歯の間抜け男が来るのを、町内中の 節穴という節穴から覗いて待っている。 お菊さんは、店の人が手伝いに来て、 今朝早々に越しました。 はい、元は旅回りの義太夫の師匠だったそうで…。  道理で、うまく語りやがった。

 三之助、朝太の流れを引き継いで、そこそこの出来、権太楼にバトンを渡し た。

権太楼のマクラ「柳家おじさん」2012/06/05 02:09

 権太楼は、2010年暮のこの会で「富久」を演った時、11月に北海道で倒れ た、腎臓、肝臓、膀胱が爆発寸前で、北海道で死んだら不動坊火焔になるとこ ろだったと、言っていた。 その頃から比べると、ずいぶん元気になって、こ の日の、その「不動坊火焔」は絶好調、笑った、笑った、記憶に残るような名 演となったのだから、まことに目出度い。

 落語の世界は、身分制度がきっちりしていて、前座といえば虫けら同然、私 の家にも一人いる。 今日座布団を引っくり返している、柳家「おじさん」、雰 囲気で付けた訳ではない、小さんの「さん」を付けて、「小父さん」では変だか ら、「小治さん」にしようかと思ったが、順を変えると小三治になるので、まず い、「おじさん」になった。 前座は、仲間内に名前を覚えてもらいたい、なか なか覚えてもらえないのだが、「おじさん」はよく覚えてもらえる。 しめこの 兎だ。

 お正月、品川プリンスホテルで吉本の落語会がある。 演芸場は撤退したけ れど、ホテル本体で正月だけやる会がある。 三枝さん、文枝さんなどに、東 京からも交じる。 今年は個室でなく、大部屋にパーティションを立てた楽屋 で、いってみれば避難所のダンボールのよう。 私と仁鶴師匠、中川家などと いうメンバーで、二回の興業だった。 ひそひそ話をしているのが、聞こえる。  二度目の時、あいつ、「おじさん」がまだ仁鶴師匠に挨拶していない、と言う。  行って来いというと、「権太楼の弟子の「おじさん」です」と言おうとして、野 郎どっちらかって、「権太楼のところの「おじさん」で」と言うもんだから、仁 鶴師匠、「あー、そうでっか、権太楼さん、ずいぶん元気になって、肥らはりま したな」。 「おじさん」でなく、「おばさん」にしときゃあ、よかった。 で も、何年かすると、案外大きな名前になっているかも知れない。

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