権太楼「不動坊火焔」の後半 ― 2012/06/07 02:27
今晩お嫁さんが来る、私の所へ、と言って、風呂屋の番台に、「おめでとうご ざいます」と言われた吉っつあん。 着物を脱いで、めでたいな、私のオケツ は平たいな。 (隣の人に)おじさん、おかみさんいる? おかみさんが来た 時、どんな心持だった? 何となく嬉しかった? おじさん。 うるせえー。 一緒に入りましょう。 勝手に入れ。 ポーンと百円、お滝さんの熱い涙。 熱 いってよ、うめてやれ。 私の心は、うまりません。 うめてやれー。 それ は、水くさい。 うめすぎた、何とかしろー。
調子に乗って、湯の中でお滝さんを狙っていた連中の悪口を言う。 鍛治屋 の鉄っつあんは色が黒くて表裏がわらない、チンドン屋の万さんは河馬みたい、 漉き返し屋の徳兵衛はちり紙に目鼻をつけたよう。 それを一人が聞いて、三 人は隣町に住む芝居噺が得意な林家正雀の弟子のジュウ雀に、不動坊火焔の幽 霊になって長屋の引き窓から下がってもらうことにする。 胡麻竹か煤竹に布 をまいて、アルコールを浸した、幽霊火、それに薄どろの太鼓を用意するよう に頼まれる。 セリフは「四十九日もすまぬのに、嫁入りするとは、うらめし い」 十時半集合。
万さんはチンドン屋の恰好で来る、笠をかぶり、前に鉦太鼓、背中にビラ札 「越後屋大売り出し」、この方が心落ち着く、と。 ハシゴを、後ろ向きに登る。 アルコールの係が、あっちの方が旨いからと、隣町の店に並んで、アンコロを 壜につめて買って来た。 なんでアンコロに火をつけるんだ。 アンコロも食 いすぎると胸が焼ける。 薄どろ係のチンドン屋は、チャンドン、チャンドン。 ジュウ雀の幽霊を吊り下げると、ワァーッ、ドンと、下まで落ちる。 何だ、 お前は? こんばんは。 (上を向いて)誰でしたっけ? 聞くな。 「四十 九日もすまぬのに、嫁入りするとは、うらやましい、もとい、うらめしい」 (事 情を聞いて)そうだったんですか、ちっとも知らなかった、これはすみません。 十円札一枚で浮かばれる(と聞いて吉っつあん)、ほらほら持ってけ。 へっつ いの所に置いて下さい、足で掻き寄せるから。 幽霊なのに、足があるのか。 では末永く、夫婦仲よく。 お前、十円やったのに、まだ浮かばれねえのか。 いえ、宙にぶら下がっております。
爆笑、爆笑の高座だった。
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