成長重視のアウトサイダーが現れる2012/09/16 02:06

 竹森俊平慶應義塾大学教授は言う。 地震や原発事故が起こり、この国の前 途を心配して、増税もやむなしという国民の合意ができかけたのに、解散・総 選挙がいわれ始めると、すっと成長重視派に人気が移る。 政権を担っていな い「政治のアウトサイダー」が夢を売り込むというのだ。 2001年の自民党総 裁選挙では、党内のアウトサイダーだった小泉氏が、消費税を上げないといっ て勝った。 民主党も、消費税を上げないという小沢一郎氏の戦略で政権交代 を実現した。 政権をとると財政健全化の責任を自覚して増税をいいだしたが、 こんどは橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会のようなアウトサイダーが出て きて成長重視を唱える。

 成長につながる政策はとるべきだ。 しかしボタンを押せば自動的に成長で きるわけではない。 成長が不可能な場合もある。 財政計画は希望的観測に よる高い成長率ではなく、過去20年で1%弱という実績値に基づき現実的に立 てるべきだ。

 成長に逃げずに増税に向き合うには、状況をみて実施時期を判断する、柔軟 にやることが、必要だ。 財政を持続可能にするためには、消費税をどのよう なタイミングで上げることが必要かという工程表をしっかり示し、実際の引き 上げのタイミングは、経済状況を完璧に把握して、柔軟に考える。 97年の引 き上げは、金融機関の危機的状況を知らずにやって失敗してしまった。

 マニフェストで哲学を打ち出すのはいいが、細かい政策まで縛るのは疑問だ。  必要な時に必要な政策を実行することが大切であり、政治家の豹変は問題では ない。 日本は衆院選で勝っても、1、2年後に参院選がある場合が多く、そこ で負けて「ねじれ国会」になると、何もできなくなる。 思い切って一院制に する選択を考えてもいいかもしれない。

 日本人は失敗の記憶を蓄積したがらない。 増税を避けてきた結果がGDP の2倍の政府債務残高だという認識を、国民がはっきり持つべきだ。 同じ間 違いの繰り返しでは、財政は追い込まれ、政治は袋小路に入ってしまう。  竹森教授の指摘、重要だと思われるので、くわしく紹介してみた。